空気中の水分から発電する紙製のウェアラブルデバイスを開発――低消費電力センサーや薬物送達などで活用可能

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米ニューヨーク州立大学ビンガムトン校は2024年11月18日、空気中の水分を取り込んで持続的かつ高効率で発電する、紙製のウェアラブルデバイスを開発したと発表した。

過去10年間で、ウェアラブル電子機器、特にヘルスケア用途のものがますます普及してきているが、ウェアラブル電子機器に電力を供給する方法が課題となっている。一般的には従来のバッテリーが最も使用されているが、硬すぎることと、連続使用時に長持ちしないことが問題だ。バッテリーの代わりとしてワイヤレス給電技術もあるが、給電範囲が限られており、持ち運びができない。

そこで研究者らが注目したのが、どこにでもある空気中の水分を電気に変える、エネルギーハーベスティング(環境発電)だ。エネルギーハーベスティング技術は今のところ、所定の時間内では非常に不規則で、場所もランダムであり、変換効率も悪いが、水分からのエネルギーハーベスティングは非常に簡単であることに気づいたという。

開発された発電デバイスでは、水分子をプラスイオンとマイナスイオンに分解する「官能基」として、細菌の胞子が使用されている。毛細管現象により紙が胞子を吸収することで、プラスイオンが下部より上部に多くある状態となり、イオンこう配が生じる。これにより電位差が生じて充電するという仕組みだ。

また、片面が疎水性で、反対面は親水性の「ヤヌス紙(Janus paper)」の層を加えることで吸湿性を高めており、水分子を引き込み、処理されるまでデバイス内に保持する。

研究チームのSeokheun (Sean) Choi教授が以前開発した紙製電子回路「Papertronics」をさらに探求する過程で、柔軟性と拡張性があり、環境に害を与えず使い捨て可能なウェアラブルデバイスを紙だけで作るという今回の研究が生まれた。長期で使用するウェアラブルデバイスの開発とは真逆の方向のアプローチだ。

この発電技術は、低消費電力センサー、ドラッグデリバリー(薬物送達)システム、電気刺激装置にとって画期的なものであるとChoi教授は考えている。

今後は、出力増加、エネルギー貯蔵方法の開発、他のエネルギーハーベスティング技術との統合などの面で改良を進める可能性がある。また、このデバイスを微小電気機械システム(MEMS)と同じサイズまで縮小することも目指す。個々のユニットを小さくし、小さなフットプリント内でより多くのセルを連結することで、電力密度が大幅に向上する可能性がある。紙を使うため、折り紙の技法などいろいろなアイデアを試すことも可能だという。

研究成果は2024年9月23日付で『Small』に掲載された。

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