自動車のエンジンを転用してグリーンな燃料を生産するプラント――米Emvolonが開発

米マサチューセッツ工科大学(MIT)のスピンアウト企業である米Emvolonは、2024年11月19日、自動車エンジンを利用した液体燃料の生産システムを発表した。

この技術は、エンジンを化学プラントとして再利用して、メタンガスからメタノールやアンモニアなどを生成する。また、自動車のエンジンを使うことで、モジュール構造のシステムとなり、既存のシステムに対して費用対効果が高い。

同社によれば、温室効果ガスとして知られるメタンガスの温暖化効果は、20年の時間軸で見た場合、二酸化炭素(CO2)の84倍になる。しかし、天然ガスの主成分であるメタンは貴重な燃料であり、重要な化学物質を生成する前段階に存在する「前駆物質」という役割ももっている。

メタンガスを利用して「カーボンマイナス」物質を製造するための装置は、従来、大規模かつ集中管理された化学処理施設であった。すなわち、メタンガスを有用な物質に変換するには、法外なコストを要していた。

同社の説明では、大量生産された自動車用エンジンを使用したことで、パイプラインのようなインフラへの投資が不要になり、結果としてメタン変換のコストを低減する。また、このシステムは断続的な自然エネルギーによって生産されるグリーン水素を、アンモニアに変換することもできる。

Emvolonのシステムの中核は「フューエルリッチ」、つまり完全燃焼に必要な燃料と空気の比率よりも高い比率で作動する、市販車のエンジンだ。ガス中のメタンを燃焼させて二酸化炭素と水に変換するのではなく、部分的に燃焼させ、あるいは部分的に酸化させて一酸化炭素と水素にする。

水素と一酸化炭素は、さらなる反応によってさまざまな化学物質を合成するための中間生成物となり、この処理工程は、エンジンのすぐ隣で行われ、エンジン自身が動力を生み出す。

Emvolonの独立型システムはそれぞれ、国際規格の40フィート(約12m)コンテナ内に収まり、約8500立方メートルのメタンガスから、1日あたり約8トンのメタノールを生産できる。

同社がグリーンメタノールに着手する理由は、海運や大型輸送などの排出削減困難セクターにとって理想的な燃料であり、また持続可能な航空燃料など、他の高価値化学物質の原料としても優れている点だ。脱炭素化の目標を達成するため、すでに多くの船舶がグリーンメタノールに転換しているという。

同社は、マサチューセッツ州ウォバーンにある敷地に建つ、約465平方メートルの本社で、1日に最大6バレル(約954L)のグリーンメタノールを生産できるシステムを構築している。

Emvolonのモジュラーシステムは、100万ドル(約1億5600万円)から1000万ドル(約15億6600万円)という比較的少額の投資で、数週間のうちに1つずつ迅速に導入できる。これは、数年間の建設プロジェクトを必要とし、数億ドルもかかる大規模な化学プラントとは対照的だ。

関連情報

Turning automotive engines into modular chemical plants to make green fuels

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