伸縮性と自己修復性を持つリチウムイオン電池――ウェアラブル機器への応用に期待

中国の吉林大学の研究者らは2024年12月3日、伸縮性と自己修復性を併せ持つリチウムイオン電池(LIB)を発表した。この研究成果は、中国の学術出版社であるKeAiが発行するジャーナル『Supramolecular Materials』に掲載された。

電子皮膚、ソフトロボット、ウェアラブル携帯電話など、伸縮性とウェアラブル用途をもつ電子機器に給電できるLIBへの需要が高まっている。しかし、現在広く普及しているLIBは硬く、ウェアラブル電子機器が求める機能要件には合致しない。

この課題に対して研究者らは、電解質と電極の両方に存在する「動的イミン結合」によって架橋された、「動的共有結合ポリマー」を考案した。これをポリマー電解質および電極のバインダーとして機能させることで、自己修復機能と伸縮可能性を併せ持つLIBを開発した。

開発したポリマー電解質は、室温で3.6×10−4 S cm−1という高いイオン伝導率を達成し、破断時の伸びは250±30%を記録した。この電解質は、100%の歪みにおける連続的な伸長と解放の繰り返しにおいても、残留歪みが無視できるほど小さい弾力性を示した。同時に、歪みが変化する過程で、電解質のイオン伝導率の変化は最小限に留まった。

さらにこの電解質は、室温において自律的な自己修復特性を示す一方、電極の伸張の状態に関係なく導電性が確認できた。この結果の重要な点は、ポリマー電解質とバインダーネットワークに存在するイミン結合の動的交換により、融合した電解質-電極界面が形成され、オールインワン構成のLIBを製造できることだ。

この設計法により、伸張時にLIBを構成する部材が剥離する問題を効果的に克服した。その結果、バッテリーは、220±20%の範囲で伸縮できるようになり、伸張と解放の過程でも安定して電力を供給できるようになった。

何らかの原因でバッテリーが切断された場合は、イミン結合の動的交換により、バッテリーが自己修復される。切断後に修復されたバッテリーの平均放電容量は126.4mAhg−1を示し、LEDを点灯させる電源として破断後も機能した。

研究者らの展望は、本研究が伸縮可能で自己修復可能なエネルギー貯蔵デバイスを設計するための、斬新で実行可能な戦略を提供し、伸縮可能でウェアラブルな電子機器への応用に大きな可能性を見いだすことを目指している。

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