なぜネコをなでると静電気が起きるのか――古代ギリシャ以来2000年以上の謎を解明

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米ノースウェスタン大学は、ネコをなでるなど、物体をこすり合わせることで静電気が発生するメカニズムを初めて解明した。滑る物体の表側と裏側では異なる電荷が蓄積され、その電荷の差により電流が発生する。この研究は、2024年9月17日付で『Nano Letters』に掲載された。

ネコをなでたり、カーペットで足を滑らせたりしたことがある人なら誰でも、物体をこすり合わせると静電気が発生することを知っている。この発見は紀元前600年にまでさかのぼる。古代ギリシャの哲学者であるミレトスのタレスは、毛皮で琥珀をこすると、毛皮がほこりを引き寄せることに気づき、摩擦によって起こる静電気について初めて報告した。

その後、毛皮に限らず、すべての絶縁体が摩擦によって静電気を帯びることが明らかになったが、この現象を説明することは2000年以上もの間できなかった。

2019年に、研究チームは2つの材料をこすり合わせると、材料表面にある小さな突起が曲がることを『Physical Review Letters』で報告している。曲げられて変形した突起が電圧を発生させることを発見したのだ。

今回の研究では、物体が接触して滑るとき、その物体の表側と裏側では異なる力を受けていることがわかった。この力の差によって、物体の表側と裏側で異なる変形、すなわち、せん断変形が起きて異なる電荷が蓄積される。その電荷の差が電流を生み出し、静電気特有の軽いビリッとした痛覚を引き起こす。

ここで重要となるのが、「弾性せん断(elastic shear)」と呼ばれる概念だ。弾性せん断は、物質が滑る力に抵抗するときに起こるものだ。例えば、人がテーブル上で皿を押すと、皿は滑ることに抵抗する。人が押すのをやめると、皿は動かなくなる。このような滑りに対する抵抗による摩擦が加わると、電荷が移動する。このように、滑ることとせん断は密接に結びついているという。

そして、研究チームが弾性せん断の概念をベースに、電流を計算する新しいモデルを開発したところ、幅広いケースの電流の値が実験結果と合致した。この研究により、なぜ摩擦が重要なのかという謎を初めて説明することができた。

静電気による火花は工業火災や時には爆発を引き起こす原因となり、深刻な問題につながることもある。また、粉末薬の着実な投与を妨げる可能性もある。研究チームは、静電気が起きるメカニズムをより深く理解することで、これらの問題に新たな解決策を提示できる可能性があるとしている。

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