アクア電池の負極材料を開発――長寿命化、高効率化に寄与 早稲田大学

早稲田大学は2024年10月29日、同大学の研究グループがアクア電池の負極材料を開発したと発表した。同電池の長寿命化、高効率化が可能となる。

アクア電池は、水素イオン(プロトン)および水を用いた水系プロトン二次電池だ。プロトンや水は地球上に豊富に存在するため、リチウム資源のように将来的な資源調達リスクを懸念する必要もなく、安全かつ安価な蓄電デバイスとして実用化が期待されている。

ただし、既存のアクア電池向け電極材料は充放電により大きく体積が変化し、劣化することが課題となっていた。

今回の研究では、電極材料の結晶構造における空洞および連結部に着目して材料を探索した結果、大きな一次元トンネルやフレキシブルに可動する頂点共有構造を有する遷移金属酸化物(Mo₃Nb₂O₁₄)の体積変化が小さく(0.4%)、劣化が少ないことを見いだした。

粒子に亀裂が生じにくく、副反応が抑制された結果、99.7%と高効率な充放電が可能となっている。既存の電極材料では、99%未満に留まっていた。

また、実験および理論計算を用いて解析を行ったところ、Mo₃Nb₂O₁₄が部分的に回転/縮小し、大きな一次元トンネルが骨格構造の膨張を吸収することで、単位格子レベルで体積変化が抑制されることが判明した。

電極材料Mo₃Nb₂O₁₄の充放電に伴う構造変化。白い斑点はMo/Nbの原子像を示す。充電がプロトン挿入、放電がプロトン脱離に対応する。

加えて、Mo₃Nb₂O₁₄を負極に採用したアクア電池のプロトタイプを作製した。充放電を繰り返しても劣化せず、従来品より長期間作動できることを確認した。

(a)本研究で開発したアクア電池の概念図
(b)室温におけるサイクル特性

今回の研究により、充放電に伴う体積変化を抑えるための材料設計指針が提示可能となった。アクア電池のほか、リチウムイオン電池や全固体電池などにも応用可能で、二次電池の長寿命化に寄与することが期待される。

また、アクア電池に用いる水溶液は、ニッケル水素電池の水溶液より高速でのイオン伝導が可能なため、高速充放電に向けた蓄電デバイスの開発につながることが期待される。

ただし、今回用いたMo₃Nb₂O₁₄は、希少金属のモリブデンを含むものとなっている。今後は鉄や銅、アルミニウムといった汎用金属で構成される酸化物を中心に材料を探索し、より安価で耐久性が高い電極材料の実用化を図るという。

関連情報

安全安価なアクア電池を長寿命化 – 早稲田大学 研究活動

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