理化学研究所は2024年11月8日、東京大学やNTTなどとの共同研究グループが、光波の振幅値を情報のキャリアとする新方式の量子コンピューターを開発したと発表した。クラウドと接続されており、共同研究契約を結ぶことで、他の企業や研究機関などもインターネットを通じて利用できる。理研は、国内の量子計算プラットフォームの利用拡大や量子コンピューターの活用法の創出、国内量子産業の発展、国際競争力の向上への寄与が期待できるとしている。
理研は2023年にも超伝導型量子コンピューターを開発したが、光方式では、計算の動作周波数を数百テラヘルツまで原理的には高められるほか、ほぼ室温で動作し、コンパクトなセットアップで大規模計算が可能、光通信と親和性が高く量子コンピューターネットワークの構築が容易といったメリットがある。このため、今後、量子コンピューターの実現方式として、非常に有望な候補の一つとなることが期待できる。
開発されたコンピューターは時間分割多重化手法を用いた測定誘起型のアナログタイプで、光波の振幅値が情報のキャリアとなる。測定誘起型量子コンピューターでは、量子の情報を量子もつれと呼ばれる量子的な相関を介して遠隔地に転送する、「量子テレポーテーション」を繰り返すことで計算を実行する。今回の光量子コンピューターでは約100個の連続量入力に対して、任意ステップ数の線形演算を可能とした。
光量子コンピューターとクラウドを接続したことで、金融や医療、材料科学、機械学習、最適化問題など量子コンピューターの活用法の検討が大きく進展することが期待される。
研究グループは今後、さらなる多入力化や超高速化、非線形操作の導入、アプリケーションの探索といった課題の解決に取り組み、光量子コンピューターの実用化を目指す。