![](https://engineer.fabcross.jp/wp-content/uploads/2025/01/250128_organic-solar-cells-for-space.jpg)
Credit: Yongxi Li, Optoelectronic Components and Materials Group, University of Michigan
米ミシガン大学の研究チームは、有機太陽電池が宇宙放射線に対して優れた耐久性と回復力を示すことを発見した。同研究成果は2025年1月9日、「Joule」誌に掲載された。
有機太陽電池は軽量で柔軟、安価という利点を持ち、宇宙での適用幅を広げると期待されている。しかし、過酷な宇宙環境での耐久性が懐疑的であった。
宇宙で有害な放射線である陽子線は、シリコン太陽電池の性能劣化を引き起こす。そこで、同研究は、有機太陽電池の陽子線に対する耐久性を調査して宇宙環境における信頼性を評価し、将来の宇宙ミッションへの適性評価を目的とした。従来の研究では、放射線照射後に光を電気に変換する全体の効率に焦点が当てられていたが、同研究では、性能劣化の分子メカニズムについても掘り下げられた。
結果、低分子で構成される有機太陽電池は、3年間の陽子線にさらされても損傷せず、高い耐久性を示すことが分かった。一方、より複雑なポリマーで構成される有機太陽電池は、効率を元の約半分にまで低下させた。
陽子線がポリマー側鎖にある水素を脱離して電気の流れを妨げるトラップを作り出し、効率を低下させることが示された。太陽に面した有機太陽電池が高温(約100℃)となると、水素の結合を回復してトラップを除去できるため、宇宙で持続的に動作できる自己修復型太陽電池が期待できる。
研究チームは現在、有機太陽電池の修復機構が真空の宇宙空間でも同様に生じるか、長期ミッションに対しても十分かを検討し、また、性能を劣化させるトラップの形成に、本質的に抵抗する材料設計方法を模索している。