炭素の結び目を初合成――ベンゼンが連なったリングに結び目や絡み目を作る合成法を開発 名大

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オールベンゼンカテナン(上)およびノット(下)の合成戦略(概要)

名古屋大学は2019年7月19日、炭素の絡み目と呼ばれるオールベンゼンカテナンと、炭素の結び目と呼ばれるオールベンゼンノットの合成に成功したと発表した。

カーボンナノチューブの部分構造である分子ナノカーボン(シクロパラフェニレン)は、ベンゼンだけでできた、直径1nm程度の大きさを持つリング状分子だ。このシクロパラフェニレンの合成の途中にケイ素原子を仮留め部位として用い、結び目や絡み目を導入した。ケイ素は後にフッ素処理によって除去でき、最終的に炭素骨格のみからなる結び目や絡み目を得たという。

代表的なナノカーボン3種類(上)およびそれらの部分構造を持つ分子(下)

合成ではC字型の分子を用意し、2つのC字型分子の中央をケイ素原子でつなぎ、ニッケルを用いた反応によってそれぞれのC字の末端をつないで2つの輪を作り、フッ素によってケイ素原子を除去。その後にナトリウムを用いた反応を行い、2つのシクロパラフェニレンが幾何学的に連結したオールベンゼンカテナンに変換する。

この合成法によって、ベンゼン12個からなるリング同士のカテナン9mgを収率16%で合成したという。16%の収率はシクロパラフェニレンの合成収率と近い水準であり、絡み目の形成効率が十分に高い。同様の方法によって、ベンゼン12個と9個の異なるサイズのリングが連結したカテナン2mgも合成できたという。

この合成法を応用し、結び目を持つトポロジカル分子ナノカーボン、別称オールベンゼンノットも合成。U字型分子をケイ素でつないだ分子を合成し、このユニットに対してオールベンゼンカテナンと同様のホモカップリング反応、フッ素処理、ナトリウム還元反応を行い、オールベンゼンノットの合成に世界で初めて成功した。なお、収率は0.3%(0.8mg)であった。

絡み目や結び目を持つ分子

X線結晶構造解析によって、この分子が結び目を持つことを確認。さらに、計算によって合成したオールベンゼンノットを部分構造とするカーボンナノトーラスの存在を明らかにし、オールベンゼンノットがトポロジカルナノカーボン合成に向けた重要なステップであることを示した。

オールベンゼンノットの分子構造

次に合成した分子が、結び目や絡み目に由来する特異な性質を持つことも分析。サイズの異なる2つのリングからなるカテナンは、光による励起の後、大きなリングから小さなリングへと非常に速い励起エネルギーの移動が起きることを観測したという。

カテナン構造は、それぞれのリングが持つ対称性を完全に維持したままリング同士の相互作用の効果を確認する唯一の方法で、同実験によってリング同士がカテナン構造を介して電子的に相互作用することが明らかになった。

また、オールベンゼンノットを有機溶媒に溶かし、水素原子核のNMR測定を行ったところ、-95度の低温においても1種類のシグナルだけが観測されたという。これは非常に速い運動によってシグナルが平均化していることを意味するという。

結び目にはキラリティと呼ばれる左結びと右結びがあり、合成したオールベンゼンノットの左結びと右結びを分離にも成功。オールベンゼンノットが結び目のキラリティに由来する円二色性を示すことも解明された。

今後は、より複雑なナノカーボンの設計と合成への研究が進むと期待され、新たな化学の発展のスタート地点になるという。

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