- 2025-3-5
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/Adapted from ACS Central Science 2024, DOI: 10.1021/acscentsci.4c01615
北京理工大学と北京科技大学の共同研究チームは、電力グリッドでの大規模電力貯蔵に適したアルミニウムイオン電池の新たな設計手法を開発した。この方法により、環境に優しく、長寿命でコスト効率と安全性の高い電池の実現が見込まれる。実験では、1万回の充放電サイクル後も損失が1%以下に留まる、極めて長い電池寿命を示している。研究成果は、2024年12月19日に『ACS Central Science』誌に公開された。
太陽や風力などの再生可能エネルギーを電力グリッドに組み込むには、電力を長期間貯蔵できる、安全で信頼性の高い大型電池が不可欠である。リチウムイオン電池は電力密度が高く、スマートフォンや電気自動車に広く利用されているが、大規模電力貯蔵にはコストや発火リスクなどの課題がある。そのため、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムイオンを利用した代替電池が開発されている。
なかでもアルミニウムイオン電池は、資源が豊富で発火のおそれが低く、大電流放電が可能であるため、持続可能で低コストの電力貯蔵での活用が期待されている。しかし、一般的に使用される液体塩化アルミニウム電解質は、アルミニウムイオンの移動度が小さいため出力電圧が低く、特に高湿度環境では陽極が腐食して電池寿命を損なう。
そこで研究チームは、液体電解質に不活性なフッ化アルミニウム塩を加え、固体電解質に変化させた。フッ化アルミニウム塩の多孔質構造により、アルミニウムイオンの移動が容易になり、陽極の腐食が抑えられる。また、界面添加剤として炭酸フルオロエチレンを用い、電極に薄膜固体コーティングを施すことで、アルミニウム結晶の生成を防ぎ、電池寿命を延ばした。
その結果、電池の耐湿性と物理的安定性、熱的安定性が向上し、外部からの衝撃や200℃までの高温に耐える高い安全性と長寿命が実験で示された。またフッ化アルミニウムの大部分は簡単な洗浄で回収/リサイクルでき、リサイクル済み材料を用いた電池の性能劣化は軽微に留まる。
「長寿命でコスト効率、安全性の高い電力貯蔵システムの可能性が示され、また、主要材料のリサイクルにより製造コストの削減も期待できる」と研究チームは述べる。今後、電力密度とサイクル寿命をさらに向上させ、実用化を進める。