- 2017-4-7
- 化学・素材系, 技術ニュース
- カーボンナノチューブ, リチウム空気電池, 物質・材料研究機構
物質・材料研究機構は2017年4月5日、空気極(正極)にカーボンナノチューブを採用したことで、従来のリチウムイオン電池と比べて15倍相当の蓄電容量を持つリチウム空気電池の開発に成功したと発表した。リチウム空気電池が実用化すれば、電気自動車の走行距離がガソリン車並みになると期待されている。
研究チームは、リチウム空気電池の空気極材料にカーボンナノチューブを用い、空気極の微細構造などを最適化することで、1平方センチメートル当たり約30mAhの蓄電容量を達成した。リチウムイオン電池の蓄電容量は1平方センチメートル当たり約2mAhであるため、15倍相当の蓄電容量を持つことになる。
リチウム空気電池は、空気極でリチウムイオンと酸素が反応して電気を発生させる。カーボンナノチューブを空気極に用いたことで表面積を大きくし、柔軟な構造になっていることから蓄電容量が大容量になったと考えられる。しかし、これまでリチウム空気電池はリチウムイオン電池の5~8倍程度の容量になると予測されていたため、15倍相当という蓄電容量は従来の考え方では説明が困難。リチウム空気電池の反応機構に関する考え方自体にも、疑問を投げ掛けることになる可能性もあるという。
蓄電池は電気自動車向けの電源や家庭用の分散電源として、今後急速な需要の拡大が予測されている。しかし現状のリチウムイオン電池は小型で高電圧・長寿命であるものの、蓄電容量を現状以上に向上させることが難しかった。そこでリチウムイオン電池の次世代を担う蓄電池として、リチウム空気電池の研究開発が進められている。
本研究は、物質・材料研究機構のリチウム空気電池特別推進チームの久保佳実チームリーダー、野村晃敬研究員らの研究チームによるもの。今後はこの成果を活用し、さらに実用的なレベルで高容量リチウム空気電池システムの開発を目指す考えだ。