- 2018-3-13
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- August Domel, Journal of the Royal Society Interface, Katia Bertoldi, サウスカロライナ大学, ハーバード大学, 空力性能
ハーバード大学の進化生物学者と技術者のチームは、サウスカロライナ大学と共同でサメの皮膚に関する研究を行い、その構造が航空機などの空力性能を向上させ得ることを解明した。研究論文は2018年2月7日発行の『Journal of the Royal Society Interface』誌に掲載されている。
サメの皮膚を電子顕微鏡で見ると、数千もの小さな鱗(うろこ)または小歯状突起(denticles)で覆われていることが判る。この歯状突起に関するこれまでの研究の多くは抗力を抑える性質に着目しているが、研究チームは揚力を増す効果もあるのではないかと考えた。
この仮説を検証するため、研究チームは小歯状突起をマイクロCTスキャンを使って3次元モデル化し、次に、それを湾曲した空気力学的断面を持つ翼の表面に3Dプリントしてテストした。その結果、小歯状突起形状は薄型の乱流翼(Vortex Generator)としても作用し、揚力を大きく増加させることを発見した。
飛行機の性能を比較する場合の重要な要素のひとつに、翼に垂直方向に働く揚力と水平方向に働く抗力の比率、「揚力対抗力比」がある。この値が大きいほど、飛行機は小さい推力で飛行できる。研究論文の筆頭執筆者であるAugust Domel氏によれば、サメの皮膚を応用した乱流翼を付けた場合、翼のアタックアングルは小さくなり、揚力対抗力比は付けない場合に比べ最大323%向上したという。
研究論文の共同執筆者で応用力学のKatia Bertoldi教授は、「生物に着想を得たこの研究の成果は、飛行機以外にも風力タービンやドローンなど、乱流生成装置を使う機器に応用でき、空力性能に優れたデザインへの道を開くものだ。」と述べている。ハーバード大学はこの研究成果の知的財産権を保全する措置をとり、商用化の機会を探っているという。
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