単結晶半導体に匹敵する量子ドットの合成に成功 スタンフォード大

Image credit: Ella Marushchenko

スタンフォード大の研究チームは、高効率の半導体材料として注目が高まっている量子ドットの量子効率を高精度で計測する技術を開発し、既存の単結晶材料と並ぶ性能を持つ材料の合成に成功したことを発表した。研究結果は、2019年3月15日付けの『Science』に掲載されている。

ナノオーダーの微小な半導体粒子構造を作り、電子がこの粒子の中に閉じ込められると離散的なエネルギー準位を持つが、これは「量子ドット」と呼ばれている。この性質を利用した量子ドットレーザーを最初に提案したのは日本の研究者だ。粒子のサイズを変えると放射する光の波長が変えられ、高い量子効率をもつといった特徴がある。太陽電池をはじめ、バイオマーカーやディスプレイなど様々な用途が期待されている。

しかし、量子ドットはその小ささゆえに、高性能の単結晶と同じ働きをするには何十億個も必要になる。多くの粒子を作れば、正常に成長しなかったり、性能に影響する欠陥をもっている場合もあるため、作製した量子ドットの性能を精密に計測することは非常に重要だ。

「吸収した全ての光子を光として再放射できるなら、科学として非常に面白いし、これまでにないデバイスを作ることができる。我々の目標は、99.9~99.999%の範囲で量子効率を計測することだ」と研究チームは語る。

研究チームは、量子ドットが再放射時に放出する熱を、光熱偏向分光法を利用して計測した。この計測法はこれまでの方式より100倍以上も精度が高く、作製したCdSe/CdSコア・シェル型量子ドットの量子効率が99.6±0.2%であることを確認した。この値は、高効率の単結晶に匹敵する。

今後は、さらに精密な計測方法を研究するとしている。99.999%以上の効率をもつ材料が発見できれば、これまで見たことのないテクノロジーの可能性を開くことになるだろう。たとえば、原子レベルの観察を可能にするバイオイメージング用蛍光染料や、熱エネルギーの損失を最小限に抑えた発光集光器型太陽光発電といったアプリケーションにおいて、重要な技術となる可能性がある。

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