- 2019-8-22
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- 「働いた後のビールはうまい」効果, ニューロン, ハイコストvs.ローコスト(HLC)課題, 中脳ドーパミンニューロン, 報酬予測, 報酬予測誤差情報, 大脳基底核, 玉川大学脳科学研究所, 研究, 脳メカニズム
玉川大学脳科学研究所は2019年8月20日、報酬を得るためのコストがその報酬の価値を高めることを実験で示すとともに、その脳メカニズムを明らかにしたと発表した。
物の価値とは、その物から得られると予測される報酬の量を指し、大脳基底核のニューロンが、この報酬予測に関わっていると考えられている。実際に与えられた報酬と予測していた報酬との違いは中脳ドーパミンニューロンによって大脳基底核に伝達され、そこで報酬予測(価値)は現実的なものに修正される。一方、「働いた後のビールはうまい」効果のように価値は相対的であり、この効果はヒト以外の動物でも存在することが実験的に示されていた。
そこで、研究グループは今回、ドーパミンニューロンが伝える報酬予測の違い、つまり報酬予測誤差が「働いた後のビールはうまい」効果を作り出しているのではないかと予想した。
実験では、ニホンザル2頭に同一報酬の下でハイコストvs.ローコスト(HLC)課題を与え、課題遂行中のサルのドーパミンニューロンの活動を解析した。その結果、サルはハイコスト試行の報酬の方を好み、またこのとき、報酬予測誤差情報(報酬予測と実際に与えられた報酬の差分)が大きいことがわかった。
さらに、同一課題の下、学習する課題を導入し、サルが学習することとコストの有り無しの関係を調査。その結果、コストがある方が有意に学習を促進することがわかった。
研究グループは、この結果を価値や意思決定に関わる多くの現象を説明できる原理であると考察。また、コストがある方が学習は進むという現象の発見は、教育のあり方を再考する契機となりうると説明している。