- 2019-12-17
- 制御・IT系, 用語集
- AC(交流)電圧, CAD利用技術者試験, CAD(Computer Aided Design), DC(直流), EMC設計技術者資格試験, EMC(電磁両立性), EMI(電磁波妨害), EMS(電磁感受性), HDL(Hardware Description Language:ハードウェア記述言語の一種), IoT(Internet of Things), アナログ回路, オペアンプ(演算増幅器), デジタル回路, 一般社団法人KEC関西電子工業振興センター, 四力学(材料力学、流体力学、熱力学、機械力学), 電気電子回路設計エンジニア, 非営利団体iNARTE(Exemplar Global)
IoT(Internet of Things)市場の急速な成長により、電気電子回路設計エンジニアのニーズが大きく高まっています。その中でもデジタル回路を安定的に作動させるアナログ回路設計は、特に需要が高まっている技術分野の一つ。IoT機器のみならず、家電製品、自動車、情報機器、産業機械などのさまざまな機器開発で、欠かせない役割を果たすアナログ回路設計エンジニアについて説明していきたいと思います。
アナログ回路の設計者の仕事内容
アナログ回路設計の業務内容やニーズ、デジタル回路設計との違いなどを中心に、アナログ回路設計技術者の仕事について解説します。
アナログ回路の設計者の仕事内容
家電製品やIoT機器、情報家電、自動車車載機器などにおいて、電源回路やモーター等を駆動するためのドライブ回路をはじめ、さまざまなアナログ信号処理をつかさどるのがアナログ回路です。
これらはデジタル回路を安定的に動作させる上で欠かせないものであり、電子機器には必ずと言っていいほどデジタル回路とセットでアナログ回路が組み込まれています。
そんなアナログ回路の設計を行うのがアナログ回路設計エンジニアの仕事です。機能的な設計はもちろん、回路基板を効率よく電子機器に組み込むためのレイアウト設計、さらには回路の試作とその試験評価など、その仕事内容は幅広く、これらをトータルに手がけられるアナログ回路設計エンジニアは、極めて高い市場価値を持つ人材だと言えるでしょう。
専門性の高い技術領域である点に加え、後継者不足などを要因に、近年、アナログ回路設計エンジニアは人材不足が深刻な問題となりつつあります。自動車開発や産業用ロボット、医療機器など活躍の場は広いので、今後そのニーズはより高まっていくと見られています。
アナログ回路とデジタル回路の違い
電気信号を0と1という2つの値として扱うデジタル回路に対し、アナログ回路は光、電波、音といった連続した電気の波を信号として処理する点で大きく異なります。
例えば家庭用コンセントから供給されるAC(交流)電圧を、さまざまな電子機器で扱えるようDC(直流)に変換したり、ラジオにおいて電波を受信し、その中から音声信号を取り出しスピーカーから聞こえるようにしたりする一連の処理も、アナログ回路が欠かせません。
デジタル回路は前述のように0と1という2つの値を信号として扱い、それらの組み合わせでさまざまなロジック処理を行うのですが、デジタル回路でこうした処理を行うには、電気や電波、音といったアナログ信号をデジタル信号に変換する必要があります。それを行うのがアナログ回路なのです。つまりアナログ回路はデジタル回路が動作するために必要な環境を整える役割を持つ回路だと言えます。
多くの電子機器において、デジタル回路とアナログ回路はセットで搭載されるのが一般的であることから、電子回路設計のプロフェッショナルを目指す方にとっては、デジタル・アナログ双方の知識が必要となります。
アナログ回路の設計者の求人が気になる方はこちら
アナログ回路の設計者のやりがいと向いている人の特徴
ここではアナログ回路設計という仕事の魅力を中心に、その設計を担うエンジニアに求められる姿勢などについて説明していくことにします。
アナログ回路の設計者の仕事のやりがい
アナログ回路設計は専門性の強い技術領域であり、近年のテクノロジーの進化により、HDL(Hardware Description Language:ハードウェア記述言語の一種)を用いた設計の自動化が進むデジタル回路設計と比べ、より「経験」が重要になるでしょう。
例えばアナログ回路を構成する上では、抵抗やコンデンサーといった受動素子部品、トラジスタやダイオード等の能動素子部品など、多岐にわたるアナログデバイスに関する知識が必要です。また、それらが干渉し、ノイズが発生しないよう設計するには、部品や配線の配置に関するレイアウトスキルも欠かせません。
さらに、アナログ回路設計の基本回路であるオペアンプ(演算増幅器)設計においては、信号増幅に関する数学的な計算も必要になるなど、「実践を通じた経験」が大きく物を言う世界だと言えます。
そんな専門性の高い技術領域であり、仕事を通じて高度な専門スキルを身に付けることができるだけに、アナログ・デジタル回路双方の知識を兼ね備えた「電子回路設計のスペシャリスト」への成長を目指せることは、大きなモチベーションになると考えられます。
また、アナログ回路設計は世の中のあらゆる電子機器で必要不可欠な技術であることから、「自分が開発に関わった製品を店頭や街中など、さまざまな場所で見ることができる」というのも大きなやりがいの一つとなるのではないでしょうか。
アナログ回路の設計者の仕事に向いている人の特徴
前述のようにアナログ回路設計は専門性が高く、奥の深い技術領域であることから、ものづくりに対する情熱が強く、電子回路自体に興味や関心を持っているような方に向いていると言えます。加えて、柔軟な思考が求められる仕事であることから、アイデアに富んだ発想が行えることも重要です。
そして何よりも、アナログ回路設計はデジタル回路設計や機械設計、ソフトウェア設計、生産技術など他の技術領域のエンジニアと連携する場面が多々あるため、コミュニケーション能力があることも重要なポイントの一つだと言えるでしょう。
アナログ回路の設計者に求められるスキルと資格
アナログ回路設計エンジニアに求められるスキルや、取得しておくと転職で有利になる可能性のある資格について説明します。
アナログ回路の設計者に必要なスキル
アナログ回路設計エンジニアには、どんなスキルや資格が求められるのでしょうか。
まず一つ目に挙げられるのが、「論理的思考力」です。電子回路設計はさまざまな部品を組み合わせて、求められる機能を実現させる仕事であるため、論理的な思考が行えることが極めて重要となります。
加えて、アナログ回路と隣接する機械制御やプログラミングのスキルや知識、さらに機械制御とも密に接する技術であることから、四力学(材料力学、流体力学、熱力学、機械力学)の知識などがあれば、さらに仕事の幅は大きく広がっていくことでしょう。
もちろん電子工学の知識があればなおよしです。特にEMC(電磁両立性)に関するEMI(電磁波妨害)やEMS(電磁感受性)などの知識は回路のノイズ対策において大きな武器となりますし、アナログ回路設計における基本的要素であるオペアンプ(演算増幅器)の知識があれば、新たな環境でより有利なスタートを切ることができます。
その他、アナログ回路設計においては回路設計用のCAD(Computer Aided Design)や、シミュレーターを用いた作業が中心となるため、転職においてはこれらの操作スキルなども大きな武器となるでしょう。
アナログ回路の設計者に求められる資格
実はアナログ回路設計に直接的に結びつく資格は存在しません。
しかし回路設計作業では前述のように専用CADを用いますし、高周波回路などではノイズ対策なども重要となるため、CADやEMCに関する資格はエンジニアとしての市場価値を高める上で大きな武器となることでしょう。
CADならば一般社団法人コンピュータ教育振興協会が発行する「CAD利用技術者試験」、EMCならば一般社団法人KEC関西電子工業振興センターと米国の非営利団体iNARTE(Exemplar Global)が共同で設立運営する国際資格「EMC設計技術者資格試験」といった資格があり、これらを自身のスキル向上のために取得するアナログ回路設計エンジニアも少なくはありません。
もし、アナログ回路設計エンジニアとして市場価値向上を望むなら、これら近接領域の技術に関する資格取得なども視野に入れてみるといいかもしれません。
今後も安定したニーズが見込まれるアナログ回路設計エンジニア
今後、IoT機器や情報機器、カーエレクトロニクス、家電製品などをはじめとした電子機器は、さらなる進化を続けていくことでしょう。その中でアナログ回路が果たす役割は従来にも増して大きなものとなり、それを支えるアナログ回路設計エンジニアへのニーズはより高まっていくことは間違いありません。
そんな豊かな将来性がある反面、その専門性の高さゆえ、慢性的な技術者不足という課題を抱えていることから、これからこの業界を目指そうという方にとっては大きなチャンスだと言えます。
もしエンジニアへの転職、または、他の技術領域からのキャリアアップを目指しているのなら、アナログ回路設計エンジニアを視野に入れてみてはいかがでしょうか。
アナログ回路設計エンジニアが活躍できる企業は、こちらです。
エンジニアの転職なら「メイテックネクスト」
求人数もNo.1、エンジニア転職のプロがキャリア分析と柔軟なマッチングを行います。土・日・祝日でも対応できるので、転職する際はぜひご利用ください。