- 2020-4-21
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- LiDAR, Michal Lipson, Nature Biomedical Engineering, Optica, イオントラップ型量子コンピューター, コロンビア大学, ビームステアリング技術, ヘッドマウントARディスプレイ, 光フェーズドアレイ(Optical Phased Array:OPA), 学術
コロンビア大学の研究チームは、近赤外もしくは青色光で動作するオンチップの光フェーズドアレイ(Optical Phased Array:OPA)を利用し、可動部品のない小型で低消費電力のビームステアリング技術を開発した。超小型のLiDAR、AR/VRディスプレイ、イオントラップ型量子コンピューター、光遺伝学など幅広い分野での利用が期待できる。研究結果は、『Optica』、『Nature Biomedical Engineering』、『Optics Letters』の3誌に公開されている。
自動運転車などのセンサーとして利用されるLiDARシステムは、可動部品を搭載した機械的スキャン方式が主流だが、装置の小型化が難しく、振動にも弱いという欠点がある。そこで、メカニカル機構に頼らないソリッドステートの光フェーズドアレイ(OPA)が注目されている。
OPAは光の位相を変えることで、ビーム角度を変える方法だ。もともとは、レーダーや電波望遠鏡などで利用されている技術で、複数のアンテナを並べてそれぞれに異なる位相を与えた時に、干渉によってある方向は強め合い、他の方向は弱め合うことを利用して、非常に指向性の高いビームを形成する。ただし、OPAで長距離を高精度に測定するには、広いビーム領域を確保するために数千の発光素子を位相制御する必要があり、電力を大量に消費するため実用的ではないとされてきた。
Michal Lipson教授率いる研究チームは、動作速度と広帯域の低損失を維持しながら、光学位相シフターの消費電力を削減するマルチパスプラットフォームを設計した。近赤外領域で512個の位相シフターと光アンテナを搭載したシリコンベースのOPAを作成し、消費電力1.9Wで2次元(70×6度)のビームステアリングを実証した。
「波長が短くなると、光は製造誤差といった小さな違いにも敏感になる。製品の完成度が低いと、より多く散乱し損失も多くなる。しかし、製造に誤差はつきものだ」と論文の共同著者であるMin Chul Shin氏は語る。
製造と材料の問題から、これまでのOPAは主に近赤外領域に限定されていたが、研究チームは窒化ケイ素プラットフォームを使って青色光(488nm)で動作するチップスケールのフェーズドアレイを作製、エミッターのレイアウトを工夫することで、50度のビームステアリングに成功した。そしてミクロンスケールのビームを制御し、脳内のニューロンを調べる埋め込み型デバイスも開発している。
研究チームは、現在、軽量のヘッドマウントARディスプレイや光遺伝学アプリケーションの開発に向け、さらなる消費電力の最適化に取り組んでいる。
関連リンク
Compact Beam Steering Research to Revolutionize Autonomous Navigation, AR, Neuroscience