- 2020-6-4
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- 6, Journal of the American Chemical Society, アイソタクチックポリプロピレン, アイソタクチックポリプロピレン酸化物(iPPO), コーネル大学, ナイロン6, プラスチック廃棄物, ポリマー, 分解性プラスチック, 学術, 高密度ポリエチレン
海洋環境で十分な強度を持ちつつ、紫外線によって分解する新しいポリマーが開発された。この研究はコーネル大学によるもので、2020年3月30日、『Journal of the American Chemical Society』に掲載された。
商業漁業は、海に浮遊するプラスチック廃棄物の大きな要因となっている。漁網とロープは、主にアイソタクチックポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ナイロン6,6という3種類のポリマーから作られているが、これらはどれもすぐには分解しない。近年、分解性プラスチックの研究は大きな注目を集めているが、商業用プラスチックに匹敵する機械的強度を持つ材料を得ることは、依然として難しい。
今回研究チームは、商用の漁具に必要な機械的特性を持つ新しいプラスチックを作ることを目指した。研究チームは過去15年間、アイソタクチックポリプロピレン酸化物(iPPO)と呼ばれるプラスチックを開発してきた。iPPOが最初に発見されたのは1949年だが、この材料の機械的強度と光分解は明らかにされていない。
iPPOは通常の使用では安定しているが、紫外線に晒されると最終的には分解する。分解速度は光の強度に依存するが、実験室の条件下では、30日間の暴露のあと、ポリマー鎖の長さは元の長さの4分の1まで減った。この材料で作られた漁具を水域環境で紛失したとしても、現実的な時間スケールで分解するため、環境における持続的なプラスチックの蓄積を減らすことができるかもしれない。
また、iPPOはナイロン6,6に匹敵する最大引っ張り強度を持つ。これらのことから、環境の影響を受けやすい用途での、ナイロン6,6の適切な代替品になる可能性がある。
研究チームは、最終的には環境に痕跡を残さないポリマーの開発を狙っており、iPPOを効果的に消滅させる研究を目指している。