北海道大学は2020年11月2日、室温における過去最高の熱電変換性能指数(ZT=0.11)を示す層状コバルト酸化物を実現したと発表した。
熱電変換は、工場や自動車から排出される排熱を再資源化する技術として注目されている。熱電材料としてPbTeなどの金属カルコゲン化物が知られているが、熱的/化学的安定性に問題があったり、毒性を有していたりすることなどによって本格的な実用化には至っていない。
一方、高温、空気中でも比較的安定な金属酸化物が熱電材料として研究されてきた。早稲田大学によって見いだされた、ナトリウムを層間に含む層状コバルト酸化物は熱電能が大きく導電率も高いために実用可能な熱電材料として期待されたが、熱伝導率が高いために、熱電材料の変換性能を示す性能指数(ZT)は金属カルコゲン化物と比較して遥かに低い数値しか示さなかった。
今回の研究では、層状コバルト酸化物のナトリウムイオンをさまざまな金属イオンに置き換えると、金属イオン層が重くなるにつれて、電気的特性は変化せずに、熱伝導率だけが減少することを発見した。最終的に重いバリウムイオンに置き換えると、室温でZTが0.11と、金属カルコゲン化物の代表であるp型 PbTeの0.1を上回る水準の性能を現した。
一般的にZTは高温になるほど上昇し、今後さらに組成を最適化したり熱電変換性能を増強したりすることで、安定かつ実用的な熱電変換材料として期待できるという。