厚さ25μmで肌に貼れる――5G対応見据えたウェアラブル向けICの開発に成功

Image courtesy Yei Hwan Jung and Juhwan Lee/University of Wisconsin Madison.

Image courtesy Yei Hwan Jung and Juhwan Lee/University of Wisconsin Madison.

2016年4月、東京大学の研究チームが皮膚に貼ることができる超柔軟な極薄有機LEDに関する研究成果を発表したが、今度は海外から、肌に貼れて超柔軟なウェアラブル向け集積回路(IC)の開発に成功したとのニュースが飛び込んできた。

開発したのは、米ウィスコンシン大学の研究チーム。肌に貼れるICの詳細について、2016年5月27日発行の専門誌『Advanced Functional Materials』で明らかにしている。

肌に貼れるICの用途としては、医療向けなどのウェアラブルデバイスを想定している。5G(第5世代移動通信)対応のウェアラブルデバイスを開発したいメーカーなどに、利用してもらいたい考えだ。

一例としては、集中治療室の患者にタトゥーシールのように薄い表皮電子装置を貼り付けることで、脈拍などの計測データを無線で飛ばし、別室にいる医師や看護師が手元で確認できるようにするといった活用例を考えている。集中治療室に入った患者のベッド周りは、脈拍などを計測するためにさまざまなケーブルが入り交じって雑多な状態で、ケーブルが絡み合う恐れもある。表皮電子装置を使うようになれば一部のケーブルが不要になり、患者はずっと快適な状況で過ごせるようになると期待している。

ツイストペアケーブルからヒントを得て、独自の構造に

肌に貼れるICの特徴は、電話のツイストペアケーブルからヒントを得て、伝送線の構造に独自設計を採用したところにある。

金属ブロックで2層に分割した2本の伝送線をツイストさせて、S字状に蛇行させながら延ばしていく。このような形状にしたことで、性能を犠牲にすることなく、肌に貼った後も伸び縮み可能に。伝送線に対する外部からの干渉を防ぎつつ、内部を流れる電磁波を封じ込めることで電流損失をほぼなくしたという。
img2
伸縮可能な伝送線の一般的な太さは640μmほどになるというが、ウィスコンシン大学が開発した肌に貼れるICの厚さは25μm。現在は40GHzまでの無線周波数で動作可能だ。

Zhenqiang “Jack” Ma氏が率いる同研究チームは、10年前からトランジスタアクティブデバイスの開発に取り組んできた。今回発表の肌に貼れるICは、高周波の無線通信と柔軟性のある電子機器に関する専門知識を結び付けた成果だとうたっている。

「私たちは高周波のアクティブトランジスタを回路に組み込む方法を見つけ、ワイヤレス化に成功しました。今回の発表が足掛かりとなり、さまざまな新たな可能性が形になって世に出てくる手助けとなることを期待しています」(Ma氏)

関連リンク

Fast, stretchy circuits could yield new wave of wearable electronics

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る