- 2021-3-3
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Chem, Ou Chen, アモルファス, アモルファス金属ガラス, コロイド溶液, トップダウン方式, バルク状金属, パラジウムナノ粒子, ブラウン大学, ボトムアップ方式, 学術, 金属ナノ粒子, 金属ナノ粒子クラスター
米国ブラウン大学の研究チームが、金属ナノ粒子が分散したコロイド溶液から、化学処理によって金属ナノ粒子クラスターを分離し、これを加圧焼結することによって極めて微細な粒径組織を持ったバルク状金属を創成する手法を考案した。通常の製造方法による金属構造よりも硬度が最大4倍高くなり、また単一成分のアモルファス金属ガラスも実現できる。研究成果が、2021年1月22日の『Chem』誌に公開されている。
金属組織において、結晶粒サイズを微細化すると強度や破壊靱性が向上することは古くから知られており、鉄鋼など工業材料においては、圧延や鍛造などの工程を経て徐々に粒径組織を細かくする“トップダウン方式”が広く採用されている。しかしながらナノレベルまで微細化しようとすると、“トップダウン方式”では最終的な粒径を均質に制御するのが非常に難しいという課題がある。そこで化学科のOu Chen助教授が指導する研究チームは、金属ナノ粒子を用いて“ボトムアップ方式”によって、ナノレベルで均質に制御された結晶粒径を有するバルク状金属を実現する手法を考案した。
金属ナノ粒子は、ガス中蒸発などの物理的方法、液相や気相における還元などを利用した化学的方法によって生成され、凝集粗大化を防ぐために、配位子と呼ばれる有機分子によって覆われている。研究チームは、金、銀、パラジウムや他の金属のナノ粒子を用い、これらの表面配位子を化学的に除去、直ちに加圧焼結して1cmほどの金属コインを作製することに成功した。これらの金属コインは、通常の製造方法による金属と同等の導電性や光反射率を有するが、その硬度は2~4倍も高いことが判った。また、「金のナノ粒子は通常、プラズモン効果として知られる現象によって紫がかった黒色を呈すが、加圧焼結すると突如、明るい金色に変化する。これが、バルク状の金になったことの証明」とChen助教授は説明する。
研究チームはこの手法によって、通常の金属のような規則正しく繰り返す結晶構造を持たず、ガラス転移現象が明確に観察されるアモルファスである金属ガラスの作製にも成功した。「金属ガラスを単一成分から作るのは非常に難しく、大半の金属ガラスは合金であるが、我々はアモルファスのパラジウムナノ粒子を用いて、パラジウム単独の金属ガラスを作製することができた」と、Chen助教授は語る。
研究チームは、「表面配位子除去の化学プロセスが比較的に簡便であり、焼結に必要な圧力も標準的な装置の性能範囲内なので、容易にスケールアップできるとともに、超硬の金属コーティング、熱起電力発電、機能性電極など多様な用途に展開できるに適用できる」と考えている。