東北大学は2022年1月14日、同大学と英ケンブリッジ大の研究グループが、脳の神経回路を構成するシナプスの動作を模倣した「神経模倣素子」の応答速度が決まる要因を解明し、神経模倣動作をモデル化する方法を発見したと発表した。脳の情報処理能力を模倣した脳型コンピューターへの応用が期待される。研究結果は2022年1月13日(独時間)に独WILEY-VCHの科学誌「Advanced Electronic Materials」でオンライン公開された。
研究グループは、導電性高分子を用いた電気化学トランジスタという電子素子に注目し、神経模倣素子として駆動させられないか、研究を続けてきた。電気化学トランジスタは電子とイオンの2種類の電気伝導を巧みに組み合わせて動作させる素子で、ウエアラブル機器への応用が期待されている。しかし、これまで動作原理は十分解明されていなかった。
そこで研究グループでは、電解質として使用するイオンの種類や膜の架橋度などを変えた一連の物性評価によって電気化学トランジスタのイオン注入(ゲート)と出力信号(ドレイン)、それぞれの過渡的な応答を測定した。その結果、使用したイオンのサイズによってイオン注入の速度が変化することを発見。さらに全体の応答速度がイオン注入速度によって変化することを解明した。
これらの実験結果をもとに、研究グループは神経模倣動作のモデル化に取り組み、応答速度を自在に設定するための条件を明らかにする「地図」(上図右)の作成に成功。神経模倣素子の応答速度の設計指針を確立した。