- 2022-1-30
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- 3Dプリンティング, Dmitry Momotenko, Nano Letters, オルデンブルク大学, ナノスケール, パウダーベッド方式, プリントノズル, 光造形法(SLA), 学術, 金属3Dプリント技術, 電気メッキ
独オルデンブルク大学らの研究チームは、電気メッキを利用した新しい金属3Dプリント技術を開発した。直径わずか25nmの銅の造形が可能で、パウダーベッド方式など金属粉末を利用するプリント技術より解像度が4000倍高い。新しい触媒やバッテリー用電極につながる可能性がある。研究結果は、2021年10月26日付けの『Nano Letters』に掲載されている。
ナノスケールの3Dプリンティングは、センシングやロボット工学、エネルギー貯蔵などさまざまな技術に活用できると期待されている。精緻な光造形法(SLA)であれば100nm以下の解像度が期待できるが、使用するフォトレジストのために機械的、光学的、電気的特性が限られている。電気化学的手法は電気的、機械的特性に優れた造形が可能だが、これまでナノスケールの解像度には達していなかった。
「我々が取り組んでいる技術は、金属プリンティングとナノスケール精度という2つの世界を組み合わせている」と、研究チームを率いるDmitry Momotenko氏は語る。新しく開発した技術がベースにするのは、電気メッキと同じ原理だ。電気メッキは、電流を流すことで溶液中の金属イオンを還元し、固体として析出する方法で、技術的に制御しやすいプロセスだ。
研究チームは、銅イオンを含んだ溶液で満たされた小型ピペットのノズルから、銅を3次元的に析出させる方法を開発した。ノズルの直径は最小で1.6nmとしたが、金属層が成長するにつれて、プリントノズルの開口部が詰まりやすくなるという問題が発生した。
そこで、研究チームはプリントの進行状況をモニタする技術を開発した。それにより基板の電極とピペット内部の電極間の電流を記録し、ノズルの動きを制御した。ノズルをごく短時間基板に近づけ、金属層が一定の厚みになるとすぐに離すという工程を繰り返しながら、銅を1層1層積み重ねることで、垂直方向だけでなく、斜めやらせん状、水平方向にもナノ構造をプリントできた。
構造体の直径も、最初のプリントノズルのサイズ選択や、実際のプリントプロセス中の電気化学的パラメータを利用して、極めて正確に制御できる。この方法を使ってプリントできる物体の最小直径は約25nm、金属粉末を溶融、焼結する金属3Dプリンティングの解像度が100μm程度であることと比べると、4000倍精細な造形ができるといえる。
研究チームは今回の技術を利用することで、より大きな表面積や特殊な形状の触媒をプリントして複雑な化学反応を生み出したり、3D構造の電極をプリントしてより効率的なバッテリーを作製できると考えている。