- 2022-9-21
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物質・材料研究機構(NIMS)は2022年9月16日、光電変換効率20%超で1000時間以上の連続発電が可能なペロブスカイト太陽電池を開発したと発表した。
ペロブスカイト太陽電池は、100℃程度の低温で製造できるため、熱に弱いプラスチック基板上に製造できる。そのため、軽量かつ低コストな次世代太陽電池として注目されており、研究開発が進んでいる。
ペロブスカイト太陽電池では、電子輸送層や正孔輸送層との界面に欠陥があると、太陽光によってペロブスカイト層に生じた電子と正孔の一部が電気的に短絡してしまうことで失われ、電力として取り出せなくなる。このため、界面の制御が重要となる。
また、ペロブスカイト太陽電池は水分によって劣化しやすい。従来のものは、100時間程度の連続発電で効率が半分以下に低下する。電子輸送層や正孔輸送層との界面で水分子を遮断し、ペロブスカイト層への侵入を防ぐことによる耐久性の向上も求められていた。
今回開発したペロブスカイト太陽電池は、光照射側から順に導電性酸化膜付ガラス、正孔輸送層(酸化ニッケル)、ペロブスカイト層、電子輸送層(フラーレン)、銀電極で構成される。各層の厚みは、それぞれ30〜400nmとなっている。
サイズは1cm角とした。実用化を視野に入れた世界標準の評価サイズとしており、研究室レベルのサイズである約0.3cm2よりも大きい。
撥水性を有するフッ素原子を含んだヒドラジン誘導体(5F-PHZ)をペロブスカイト層と電子輸送層の界面に導入した。その結果、界面欠陥が最小限となり、結晶性が向上して発電ロスが低減している。また、電子輸送層からペロブスカイト層に侵入する水分子を界面で遮断可能となり、耐久性が向上した。
さらに、ホスホン酸誘導体(MeO-2PACz)を正孔輸送層とペロブスカイト層の界面に導入した。酸化ニッケルの欠陥構造を埋めることで、発電ロスを低減している。また、酸化ニッケルとペロブスカイト層の直接接触による分解反応を防止することで、結晶性の良好なペロブスカイト層が得られた。
これら2種の界面制御により、光電変換効率20%超で1000時間以上の連続発電が可能な1cm角のペロブスカイト太陽電池を開発した。
今後は、効率や耐久性といった太陽電池性能において、界面導入方法、各層の結晶や表面構造、界面での電子や正孔移動特性の要素に分子を分類し、データベース化する。データを活用し、性能を予測しながら界面制御のための分子設計を行うことで、ペロブスカイト太陽電池のさらなる研究を進める。