低環境負荷な材料で構成した回路と電池を用いたセンサ・デバイスを開発――通信信号の生成に成功 NTTと東大

日本電信電話(NTT)と東京大学は2022年10月7日、貴金属や有害物質を含まない材料で構成した回路および電池を用いたセンサ・デバイスを作製し、通信信号を生成することに成功したと発表した。同発表によると、世界初の成果だという。

IoT(モノのインターネット)化が進むにつれて、センサ・デバイス化した消耗品を廃棄することによる環境汚染や、自然現象の可視化に用いる気象観測ブイなどの回収が困難であることなどが課題となりうる。

IoTネットワークの概要と低環境負荷センサ・デバイスの位置づけ

IoT化によって想定されるユースケース例

両者はこれまでに肥料成分と生物由来材料からなる「ツチニカエルでんち」を作製し、電池動作を確認している。

今回、廃棄物に関連する有識者へのヒアリングを基に、「資源性を考慮し、貴金属を使用しないこと」および「有害性を考慮し、原則、環境経由で人間や動植物に影響を与える恐れのある化学物質群を使用しないこと」を条件に低環境負荷な材料を選定した。

今回作製したセンサ・デバイスは、7種類の元素(H、C、N、O、Mg、Al、S)のみを材料に用いている。

低環境負荷センサ・デバイス(回路、電池)の構成材料

全電極にカーボン材料を用いた有機トランジスタ作製プロセスを開発。これを用いて、CMOS構造で低環境負荷のアナログ発振回路やデジタル変調回路を構成した。

また、低環境負荷電池としては、カーボンを電極として用いるための3次元の導電性多孔体構造を形成した。さらに、有機半導体からなる低環境負荷回路の駆動にあたっては電荷輸送に高い電圧が求められるため、電池の直列化構造による高電圧化を進めた。

(左)低環境負荷材料からなるトランジスタの構成図
(右)トランジスタを集積した回路

これらと市販スピーカ(またはオシロスコープ)、ケーブルをブレッドボード上で接続し、センサ・デバイスを作製した。ブレッドボードを通じて、発振回路や変調回路などの要素回路ごとに作製した低環境負荷回路を接続する仕組みとなっている。

センサ・デバイスの実証試験構成

同デバイスには、3ビットの個体識別番号を付与した。低環境負荷電池が液体を検出すると発電し、通電した低環境負荷回路が1ビットの検出信号と3ビットの識別番号を重ね合わせた発振周波数140Hzの通信信号を生成、スピーカで音波を発生する。

同回路の出力をオシロスコープで測定したところ、4ビットの通信信号(検出信号=”1″, 識別信号=”001″など)の信号を出力していることが確認された。

実証実験結果

両者は今後、低環境負荷電池や回路に関する要素技術の高度化を進める。また、実用化に向けて企業や外部機関などと連携し、新たなサービスの創出を目指す。

関連リンク

プレスリリース

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る