- 2022-11-16
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九州大学は2022年11月15日、同大学と青山学院大学、富山大学、北海道大学、大阪大学の共同研究チームが、大型レーザーを用いてミニチュアの太陽フレアを実験室で生成したと発表した。
ほぼ反平行に近い磁力線を伴った2つのプラズマが相互に近づいた際、電気抵抗により境界面に流れる電流が弱まり、磁力線がつなぎかわる「磁力線再結合(磁気リコネクション)」と呼ばれる現象が生じる。
磁場からプラズマへのエネルギー変換の速さを決定する重要な現象である一方で、磁力線が繋ぎ替わる速さを定量的に説明できないなど、未だに謎が多い現象として知られる。
高温かつ高密度なプラズマを生成できるレーザープラズマを使用することで、研究が進展することが期待される。ただし、プラズマが微小で定常性に欠けるため、時間、空間分解した計測が困難となる。このため、詳しいパラメータやプラズマを構成する粒子集団の速度分布などはこれまで計測できていなかった。
今回の研究では、大型レーザー装置を使用し、高エネルギープラズマ中に磁気リコネクションを引き起こすような反平行な磁場配位を生成した。高出力レーザーを集光照射することで、プラズマ中に周回状の磁場が自己生成される。
異なる2点に照射することで、その間に逆向きの磁場を有するプラズマが生じる。このプラズマ中に別の低エネルギーな計測用レーザーを集光照射することで、異なる2方向からプラズマ中の電子による散乱光を分光計測した。
プラズマ中の自由電子から散乱する(トムソン散乱)光のスペクトルを解析することで、プラズマが有する温度や速度、局所的な電流、イオン価数やプラズマ流の速度を算出できる。
計測の結果、反平行磁場に垂直な方向に電流が計測され、時間とともにこの電流が減少して消失する様子が観測された。これは磁場が繋ぎ替わったことを示す。
また、磁場に平行な方向には、プラズマを構成するイオンの速度分布を求めることができる。これは、プラズマが加速、加熱されている結果を示唆するものとなった。
このように、プラズマ粒子(イオン)の速度分布関数を計測し、磁気リコネクションに関連した電流構造やプラズマ加速、加熱を同時に計測することに成功した。同発表によると、レーザー宇宙物理実験において初となる成果だという。
同研究チームは今後、磁力線を貫く任意の方向のプラズマ計測を可能とすべく、さらに多方向での計測が可能なシステムを開発する。
磁力線が繋ぎ替わる微小領域における粒子運動や、プラズマを磁場から構成する電子、イオンへのエネルギー分配を詳しく調べることで、これまで解明できていなかった磁気リコネクションの速い駆動メカニズムやエネルギー変換過程の解明につながることが期待される。