- 2023-6-27
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- Physical Review Letters, Stephen Hawking, アインシュタイン, ブラックホール, ホーキング放射, ラドバウド大学, 事象の地平線(事象の地平面), 反粒子, 学術, 時空の湾曲, 粒子, 重力理論, 量子物理学
ブラックホールだけでなく、宇宙で星の残骸のような大きな物体は全て最終的に消滅するという新たな理論研究が発表された。この研究はオランダのラドバウド大学によるもので、2023年6月2日付で『Physical Review Letters』に掲載された。
イギリスの物理学者Stephen Hawking氏は、「ホーキング放射」というプロセスを経てブラックホールは最終的に消滅すると予測した。Hawking氏は量子物理学とアインシュタインの重力理論を組み合わせ、粒子と反粒子のペアの自然発生的な生成と消滅は、光や物質がブラックホールの重力から逃れられなくなる領域である事象の地平線(事象の地平面)の近くで起こるはずだと主張した。
粒子と反粒子は量子場からごく短時間で生成され、その後、すぐに消滅する。しかし、時には一方の粒子がブラックホールへと流れ込み、もう一方の粒子はエネルギーを持ったままブラックホールから放出されることがある。これがホーキング放射であり、その結果、ブラックホールは少しずつ質量エネルギーを失い、最終的に消滅すると考えられている。
今回の研究では、このプロセスを再検討し、事象の地平線の存在が本当に重要であるかどうかを調べた。研究チームは、物理学、天文学、数学の技術を組み合わせて、ブラックホールの周囲でこのような粒子のペアが生成された場合に何が起こるかを分析した。その結果、事象の地平線をはるかに越えた所でも、新しい粒子が生成されることが分かった。
ブラックホールのはるか向こうで、時空の湾曲が主な原因となって放射を作り出しており、そこでは、粒子は重力場の潮汐力によってすでに分離しているのだという。これまでは事象の地平線がなければ放射は起こらないと考えられていたが、研究の結果、事象の地平線が不可欠ではないことが明らかになった。
このことから、宇宙にある死んだ星の残骸やその他の大きな物体など、事象の地平線がない物体もこの種の放射をするということになる。そして、非常に長い時間をかけて、宇宙のありとあらゆる物は最終的にブラックホールのように消滅すると考えられる。
今回の理論研究は、ホーキング放射に加えて新しい形の放射があることを論証したものだ。また、Hawking氏のブラックホールに関する理論は、完全ではないものの正しかったことが示された。この成果は、ホーキング放射についての理解だけでなく、宇宙とその未来についての見方をも変えるものだという。