- 2023-7-19
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東北大学は2023年7月18日、同大学大学院工学研究科の研究チームが、グラフェンデバイスにおける高速な量子ビット読み出しを実現したと発表した。
グラフェンは優れた物性を持つことから、次世代デバイスへの応用が有望視されている。また、量子力学的状態の長寿命が予想されており、量子ビットの材料としても期待されている。
量子ビット状態の読み出し手法としては、量子ドット電荷計を用いるものが挙げられる。量子ビット状態を一度で高速かつ高精度に読み出すにあたっては、同電荷計の伝導度を高速で読み出すことが求められる。
半導体量子ビット向けとしては、高速かつ高精度な読み出しを実現する手法として、電荷計の高周波反射を測定する高周波反射測定法が開発されている。しかし、グラフェンなどの2次元材料においては、測定手法が確立していなかった。
グラフェンデバイスなどで高周波反射測定法を用いるにあたっては、高周波信号をデバイスに十分に印加できるように寄生容量を低減することや、電荷計が高感度な量子化伝導度付近でインピーダンス整合が成立することが求められる。
同研究チームは今回、絶縁シリコン基板をベースに、微小なグラファイト電極を二層グラフェン直下に配置した構造を作製した。冒頭の画像(a)は、同構造を示したものとなっている。
次に、冒頭の画像(b)のように、作製したデバイスを共振回路に組み込んだ。
高周波信号の反射特性を測定したところ、ゲート電圧の印加によりグラフェンの伝導度が変化するとともに、反射特性が変化することが確認された。
また、量子化伝導度付近において、反射率が0となる条件(インピーダンス整合)が満たされていることも判明した。この状態では伝導度の変化に対して反射率が大きく変化するため、高感度な読み出しが可能となる。
さらに、量子ドット形成を示す「クーロンダイアモンド」と称される電気伝導を観測した。量子ドットの伝導測定においても有用であることが確認されている。
次に、測定で得た伝導/ノイズ特性を用いて、今回作製したデバイスを電荷計として用いた際の読み出し精度を評価した。結果として、電荷計を量子ドットの真上または真下に配置して両者を原子オーダーの距離で近づけることで、読み出し速度や精度が大幅に向上することが判明した。
今回の研究結果は、量子コンピュータやデバイスの研究開発に寄与することが期待される。
また、量子ドット電荷計は固体中の物性探索に向けたツールとしても活用できるため、これまで観測が難しかった現象の測定など、2次元材料の基礎物理を理解するためのプラットフォームとしても期待される。
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