産総研、微細間隙の毛細管力を利用した高精度厚膜印刷技術を開発

産業技術総合研究所は2016年9月12日、ナノインプリントとスクリーン印刷の技術を用いて、従来の印刷原版を使って原版パターンの1/30以下に細線化できる微細印刷技術を開発したと発表した。

開発した印刷技術は、ナノメートルサイズでの構造を成形加工できるナノインプリントによりフィルム表面に微細な凹凸構造を形成し、その微細間隙に発生する毛細管力を利用することで機能性インクを間隙内に閉じ込める。これにより従来より高いアスペクト比の厚膜印刷が可能になる。

また、スクリーン印刷で微細パターンを印刷する場合に生じる原版部でのインク詰まりを解消することで、高精度パターン印刷の生産性向上が期待できる。さらに、高アスペクト比で超微細なパターン印刷ができるために、抵抗が低く透明性の高い配線を形成できる。

今回の技術を応用すれば、画面コントラストが高く応答速度が早いタッチパネルの実現が期待できるという。

従来の印刷技術(200μmの原版開口幅)による導電フィルムは、波長550nmの光の透過率が43%であったが、この技術を用いると、線幅3μmの超微細な配線を印刷でき、導電フィルムの透過率は90%であった。透明度の高い導電フィルムが作製できることで、タッチパネルへ応用すれば画面のコントラスト比が向上する。

また、従来の印刷技術では微細化すると配線の高さが低くなりシート抵抗が増加してしまうが、今回開発の技術を用いれば、微細間隙内にインクを閉じ込めることで配線の高さを保つことができる。これにより高アスペクト比で印刷できるため、シート抵抗の増大を抑制できる。シート抵抗が小さいと回路の抵抗が小さくなり、タッチパネルで応用すれば応答速度が向上する。

さらに、この技術と自動車向けの曲面パネルを製造する技術であるフィルムインサート成形を用いて、曲面部分に微細な厚膜パターンを印刷する試作にも成功しており、自動車や家電などの曲面パネルのフィルムインサート成形にも応用できる。将来的には自由曲面での透明なタッチパネルの配線への応用も期待できるという。

今後は、この技術の産業分野で活用されることを目指して、高精細、厚膜印刷フィルムのサンプル提供や共同研究を行うという。

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