物質・材料研究機構(NIMS)は2017年6月29日、酸化物ナノシートやグラフェンなどの2次元物質を、1分程度の短時間で隙間なく配列する技術を開発したと発表した。同技術では、さまざまな組成・構造の2次元物質に、単層膜から多層膜まで層単位で製膜可能。さらに、さまざまな形状、サイズ、材質の基材上に製膜できるという。
グラフェンや酸化物ナノシートなどの2次元物質は、高速電子伝導、高誘電性、高い触媒性などの既存の材料にはない優れた機能を発現。革新的デバイスの材料として、精力的に開発研究が進められている。しかし、2次元物質の多くが溶液中にマイクロメートル程度の大きさで分散したコロイドとして生成するため、各種基材の上にどのようにして稠密に膜を形成するかという問題があった。現状では、ラングミュア・プロジェット(LB)法が有効とされているが、製膜条件が厳しく、手順は複雑で、単層膜の製膜に1時間もの時間が必要だった。
研究グループは、半導体プロセスなどに用いられるスピンコート法を活用。基材に酸化物ナノシートやグラフェンの有機溶媒ゾルを滴下し、基材を回転させたときの遠心力などにより原子レベルで平滑に製膜できることを発見した。また、同手順は反復が可能で、多層膜や超格子膜も構築できるという。メカニズムとして、遠心力によって基材端部に運ばれたバラバラの膜が、端から回転中心に向けて順番に配列していくことで稠密単層膜が形成されると説明。また精度は、単層被膜領域95%以上、表面粗さ0.5nm程度で、LB法に匹敵するという。
今回開発した技術により、低電圧・高速動作トランジスター、超小型コンデンサーなど、ナノシートを用いたデバイス開発が進展するとしており、また工業的製造への実用化が期待される。