- 2018-2-14
- 技術ニュース, 電気・電子系
- 不揮発性磁気メモリー, 産業技術総合研究所, 産総研, 面内電流型磁気メモリー
産業技術総合研究所(産総研)は2018年2月13日、次世代の不揮発性磁気メモリー(MRAM)として研究開発を進めている面内電流型磁気メモリーにおいて、磁石材料の異常ホール効果を利用した新たな記録技術を開発したと発表した。
面内電流型磁気メモリーの配線の一部に安価な鉄を基本とした磁石材料を使うことで、高い記録効率が得られることを発見。実際に素子を作製して原理実証した。安価な鉄を用いて成功したことから、今後の面内電流型磁気メモリーの材料戦略に大きなインパクトを与えることになるとうたっている。
AIやIoTの普及を図る上で、課題の1つになっているのがIT機器の超低消費電力化だ。モバイル機器になると、CPUやメモリーが電力の30~40%を消費する。そこで消費電力を抑えようと、消費電力が比較的少ない不揮発性メモリーが注目されるようになっている。
次世代の不揮発性メモリーの1つとして、産総研が2014年からアメリカ国立標準技術研究所やフランス国立科学研究センターと共同研究しているのが面内電流型磁気メモリーだ。面内電流型磁気メモリーは、記録層と呼ばれる磁石の磁化の向きで情報を記憶し、情報を書き換える時は記録層の下の非磁性材料を用いた配線に電流を流して、記録層の磁化を反転させる。記録層に電気を直接通さないために記録層の通電破壊の危険性が小さく、書き込みと読み出しの回路が分離されるのでメモリー機能を制御しやすいといった特徴がある。
しかし、これまでの非磁性材料を用いた配線の面内電流型磁気メモリーでは、情報書き換え時のスピンの方向により記録エラーが生じてしまっていた。
そうした課題を解決するためには、下部配線の一部を磁石材料に置き換えることで、情報書き換えが確実になって記録信頼性が飛躍的に向上すると、産総研などが理論的に提唱してきた。ただし、これまで原理実証が報告されていなかった。それが今回、原理実証によって一歩前進したことになる。