- 2018-4-18
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- ピュアオゾン, フレキシブルエレクトロニクス, プリンテッドエレクトロニクス, 常温成膜技術, 明電舎, 有機ELディスプレイ
明電舎は2018年4月17日、純度100%のオゾン(ピュアオゾン)を使用した常温成膜技術を確立したと発表した。常温での成膜技術は世界初だという。
同社は、フレキシブル有機ELディスプレイ分野、PE(プリンテッドエレクトロニクス)分野、フレキシブルエレクトロニクス分野等に使われる高機能フィルムの市場拡大を見込み、同技術を開発した。
製造工程では同社の「ピュアオゾンジェネレータ」を使用する。同装置で発生したピュアオゾンガスとエチレンガスを反応させると、OHラジカルが生成される。そのOHラジカルとオルトケイ酸テトラエチル(TEOSガス)を化合させると、二酸化ケイ素と二酸化炭素、水、酸素に分解される。このうち酸素、二酸化炭素、水を不純物として排気し、二酸化ケイ素のみを取り出してフィルム上に堆積させることで高純度の二酸化ケイ素膜が生成される。
フレキシブル有機ELディスプレイ分野では現在、プラズマ技術を活用し100~150℃で成膜されているが、今回開発した技術は、常温の30℃で樹脂フィルム上に成膜できる。このため、熱のダメージを与えずにフィルムなどの低温素材への成膜が可能だ。また、消費電力を抑え製造コストを削減できる可能性がある。
さらに、5~780nmの超薄膜から厚膜まで幅広く成膜をコントロールできるため、超薄膜でも緻密性が期待できる。この他、原料ガスを変えることで、アルミ酸化膜や高誘電体膜等の最先端金属酸化膜の成膜も可能だ。さらに、原料ガス切り替えにより多層成膜にも対応できる。
これらの特徴により、同技術は「ダメージレス」で「薄く緻密」な「傷のつきにくい」「曲がる」「バリア性に優れた」ディスプレイ用フィルムの多くの部分に将来適用される可能性があるという。
また、フィルム間の密着性向上のための膜質改良や半導体製造工程で発生する有機物の除去も可能なことから、製造工程の短縮も期待できるとしている。
明電舎では今後、高品質なバリアフィルムの技術を確立するとともに、各種製造装置メーカーなどとパートナーシップを組むことで、技術の提供およびピュアオゾンジェネレータの拡販を行うという。