温めると縮む材料――東工大など、これまでで最大の体積収縮を示す負熱膨張材料を発見

今回開発した負熱膨張材料の低温相、高温相の結晶構造

東京工業大学は2018年6月11日、東北大学および神奈川県立産業技術総合研究所と共同で、温めた際に最大の体積収縮を示す「負熱膨張材料」を発見したと発表した。

ほとんどの物質は熱によって膨張し体積が増すが、光通信や半導体製造などの際には精密な位置決めが要求されるため、わずかな熱膨張による体積増が問題になる。このため、温度上昇に伴い収縮する負膨張材料によって、構造体の熱膨張をキャンセルさせる設計がなされている。

しかし負熱膨張材料の種類は少なく、市販の材料は体積収縮の割合がわずか1.7%程度しかない。また、2016年に名古屋大学で6.7%の体積収縮を示す物質が発見されたが、それは空隙の多い材料組織に由来するもので、材料自身による負熱膨張ではなかった。

今回の研究では、代表的な強誘電体(絶縁体の一種)であるチタン酸鉛PbTiO3と同じ極性のペロブスカイト構造を持つ、バナジン酸鉛PbVO3の負熱膨張物質化に成功した。PbTiO3は強誘電体から常誘電転移に伴って負熱膨張を示すが、収縮率は0.6%程度と非常に小さい。また、PbVO3は圧力をかけると約10%の体積収縮を伴って常誘電転移するが、常圧では相転移が発生しない。

今回、2価の鉛イオンを、一部が3価のビスマスイオンとランタンイオンで置換して電子ドープを行い、バナジウムイオンの価数を4価から3.76価に変化させた「Pb2+0.76La3+0.04Bi3+0.20V3.76+O3」にすることで、200~400Kの常温を含む温度域で、8.5%の大幅な体積収縮を伴う負熱膨張を実現した。

今回開発した物質は、大きな負熱膨張を示すが、環境に有害な鉛を含むという問題がある。今後は、当研究で有効性が確認された電子ドープを用いることで、鉛を含まない他のペロブスカイト化合物の負熱膨張化が期待されるという。

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