JAISTら、銅スズ亜鉛硫化物系ナノ粒子から環境に優しく熱電変換性能の高いナノコンポジット熱電材料を創製

北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は2018年8月23日、日本触媒、産業技術総合研究所(産総研)と共同で、銅スズ亜鉛硫化物系ナノ粒子を化学合成し焼結することで、環境に優しい銅スズ亜鉛硫化物系ナノ構造熱電材料を創製したと発表した。

テルル化ビスマスをはじめ、実用化されている多くの熱電材料には、テルル、セレン、鉛などの毒性が高い、あるいは資源的に希少な元素が用いられている。そのため同研究チームは安全性や持続可能性の観点から、比較的安価で安全、資源的にも豊富な金属硫化物材料に注目してきた。金属硫化物熱電材料は、既存の熱電材料の主要元素であるテルルやセレンと同じ第16族元素である硫黄を用いており、熱電材料としての潜在性も高いと考えられる。

今回、同研究チームは銅スズ亜鉛硫化物系ナノ粒子を化学合成し、さらに若干組成が異なる2種類の銅スズ亜鉛硫化物系ナノ粒子(Cu2Sn0.85Zn0.15S3とCu2Sn0.9Zn0.1S3)を配合し、粒成長を抑制しながら焼結することで、それぞれの組成の銅スズ亜鉛硫化物の長所である高電気伝導率と低熱伝導率を併せ持つナノコンポジットの創製に成功した。

特に、Cu2Sn0.85Zn0.15S3とCu2Sn0.9Zn0.1S3を9:1の比率で配合して創製したナノコンポジットは、構造や組成制御がされていない通常の銅スズ硫化物(Cu2SnS3)結晶に比べて約20倍の熱電変換性能を示した。

今回の研究は、高性能銅硫化物系熱電材料の創製に向けての大きな第一歩であり、今後はCu2SnS3系だけでなく、テトラヘドライト(Cu12Sb4S13)系など、さまざまな銅硫化物系ナノ粒子を化学合成し、それらナノ粒子を複数種類配合して焼結することで、さらなる熱電変換性能の向上を図るという。

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