東大、分子1個でできたレバー型スイッチの駆動に成功――より複雑な分子マシンの開発に期待

針の接近で銅表面上の一酸化窒素がスイッチする瞬間の模式図

東京大学は2018年9月11日、1個の分子からできた「レバー型スイッチ」を駆動させることに成功したと発表した。レバー型分子スイッチのメカニズムが解明されたことで、より複雑な分子マシンの開発が期待されるという。

分子1個の大きさは、一般に1億分の1メートルから100億分の1メートル程度と非常に小さい。しかし、そのようなナノスケールの世界においても、日常生活で使用している機器と同じような機能をする分子が存在する。例えば、生体内にはモーターのように回転するタンパク質やシャクトリムシのように移動するタンパク質などの機能的な分子が数多くある。

このような機械や機械部品のように特定の働きをする分子は分子マシンと呼ばれ、分子に特定の機能を持たせる研究や分子の持つ機能を調べる研究が盛んになされている。2016年には、ヨーロッパの科学者3名が分子マシンの設計・合成の研究によりノーベル化学賞を受賞した。

外部からの刺激によって状態を切り替える「分子スイッチ」は、最も簡単かつ基本となる分子マシンの1つだ。しかし、分子レベルでの機械的スイッチのメカニズムについては、未解明な部分が多く残されている。研究グループは今回、銅の表面に突き立った1個の一酸化窒素分子を、レバー型スイッチのように押し倒して状態を切り替えられることを明らかにし、そのメカニズムを調べた。

レバー型スイッチは棒(レバー)を指で押し倒すことで信号を入力するスイッチで、機械の電源やゲーム機のコントローラなどに用いられている。一酸化窒素の「分子レバー」の長さは0.3ナノメートル(30億分の1メートル)で、一般的なレバー型スイッチの長さの1億分の1だ。分子レバーは指の代わりに原子間力顕微鏡(探針を試料に近づけて、探針先端の原子と表面の原子との間に働く力を測定することで、試料表面を観察する顕微鏡)の鋭い針で押し倒す。

一般的なレバー型スイッチ(上)と、一酸化窒素による世界最小のレバー型スイッチ(下)の模式図

研究グループは、針が近づいていく過程で分子が針から受ける力を細かく解析。その結果、接近した針に反発して分子が次第に傾いていき、最終的に押し倒されることが分かった。この反発の原因は、パウリ斥力と呼ばれる2つの接近した原子間に働く力だ。そして、押し倒されたレバーは電子を当てることで元の突き立った構造に「リセット」することができる。これにより、この1個の分子は、繰り返し使用できる分子スイッチとして機能を果たすことが実証された。

原子間力顕微鏡による針と分子との間に働く力

分子レバーが倒れるメカニズムは一般的なレバー型スイッチとよく似ているが、レバーを倒すために必要な力は0.4ナノニュートン(40億分の1ニュートン)で、一般のスイッチのおよそ100億分の1と極めて微小だ。通常のスイッチで指がレバーを押す力は、指とレバー間の無数の原子のパウリ斥力が足し合わされて生じる。分子レバーは、2個の原子間に働く最小単位のパウリ斥力で押される。

レバー型分子スイッチのメカニズムが解明されたことによって、今後より効率良くスイッチできる方法を探索したり、より複雑な機能を持つ分子を設計・制御したりするなど、分子マシン開発の進展が期待される。

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