東大とハーバード大、結晶の対称性全230種のトポロジカルな性質を表す指標を発見 ――トポロジカル物質の包括的な新理論を提案

(左)原子近傍の電子のエネルギー準位/レベルの模式図 (右)その原子が周期的に並んだ時のバンド構造の例

東京大学とハーバード大学は、トポロジカル絶縁体やトポロジカル半金属と呼ばれる物質群を包括的に扱うことができる新理論を発表した。研究成果は、2017年6月30日にNature Communicationsにてオンライン公開された。

トポロジカル物質は、物質中の電子状態が捻られることにより、金属、半導体、絶縁体といった枠組みでは理解できない新しい性質を示す物質群だ。例えばトポロジカル絶縁体は、物質内部は絶縁体であるにもかかわらず物質表面は金属になる。そして。この表面金属状態は、スピントロニクスの分野に応用されており、次世代のデバイス開発につながることが期待されている。

トポロジカル絶縁体・半金属の性質の理解には、物質の持つ対称性が重要な役割を果たす。結晶の持つ対称性には全部で230種類あることが知られているが、これまでは、ごく一部の限られた対称性の場合にしか研究がなされてこなかった。

そこで、研究グループは、ある対称性をもつ物質がどういう条件を満たせばトポロジカル物質となるかという指標を、230個すべての対称性に対して計算。結晶対称性の表現論と群論という数学の手法により、バンド構造を分類することで、この難問を解決した。

対称性と群論によるバンド構造の分類の概念図

この成果は、基礎科学としての意義だけでなく、新たなトポロジカル物質を探索していく上での指導原理として、また、新デバイスの開発やトポロジカル量子コンピュータの発展などに役立つことが期待される。

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