自己修復する耐熱性の多孔性結晶を合成――弱く可逆的な結合を導入し致命的損傷を回避 東大など

耐熱性と自己修復性を両立させた多孔性結晶

東京大学は2018年9月21日、理化学研究所、名古屋大学、京都大学と共同で、優れた耐熱性と自己修復性を両立させた多孔性結晶の合成に成功したと発表した。

小さな細孔を持つ物質から成る多孔性材料は、空気清浄フィルターや浄水フィルターなどの家庭用品、また、化学製品の製造現場などで、広く用いられている。しかし、多孔性結晶は一般に高温に弱く、いかに熱的に丈夫な多孔性材料を作るかが焦点の1つとなっていた。

研究グループは今回、対称性の高い単純な分子を有機溶媒(アセトニトリル)中に溶解し、異方的に自己組織化させることで、自己修復性を示す耐熱性の多孔性結晶を合成した。そして、この多孔性結晶が、202℃までの高温に耐え、さらには、325℃までなら、加熱により崩壊させても、アセトニトリルなどの蒸気にさらすことで潰れた細孔が自発的に修復することを確認した。

また、SPring-8を使った構造解析から、各細孔の天井と床の部分がC-H…N結合と呼ばれる弱く可逆的な無数の結合から構成されていることを発見。そして、202℃以上の加熱による細孔の崩壊では、C-H…N結合の部分を選択的に崩壊させることで致命的な損傷を回避していることが分かった。

研究グループは、開発された多孔性結晶は有機物のみから構成され、金属イオンを含んでいないことから、人体や環境保護の側面からも優れた材料だと説明。また、次世代機能性材料の開発にも役立つとし、持続性社会の構築に貢献できるとしている。

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