ものづくりプロセス革新の歴史と指針

本記事は、製造業の課題解決と業務生産性の改善を支援するWebサイト「ものづくりドットコム」を運営する産業革新研究所の代表取締役であり技術士でもある熊坂治氏が、製造業の技術者向けに効果的な設計、開発プロセスについて解説する連載記事です。(執筆:熊坂治)

ものづくりの現状と革新の歴史
図1は経産省が毎年実施する工業統計調査結果の推移です。従業員4人以上の国内製造業事業所数は1996年に約37万件でしたが、20年後の2016年には19万件余りとほぼ半減しています。同期間の従業員数減少率は25%であり、出荷額減少は3.5%です。

これは、経済成長が望めない中で、事業規模を拡大するなどにより、一人当たりの生産性を高め続けてきたことを示します。

図1.製造業関連指標の推移(経産省工業統計を加工)

豊かになる方法としてドラッカーは、ナレッジワーカー(知識労働者)になることを提言しています。人口減少が進む日本で製造業が豊かになるためには、出荷対象を海外にも拡げるか、創意工夫によって一人当たりが生み出す付加価値を増やすかの二者選択しかありません。

製造業に求められる重要項目は時代によって図2上段のように変遷し、より高度になってきています。そしてそれらの要求に応えるため、図2下段に示すような数々の管理するための方策が提案されてきました。ものづくりプロセスの革新は専門技術に加えて、これら管理技術や手法が協調して実現されるのです。

図2.製造業における重要項目の変遷とそれに伴う管理技術の発達

革新活動導入の実際
企業が前記の手法、プロセスを導入すれば必ず成果が得られるということはありません。京セラ創業者である稲盛氏の人生方程式「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」を持ち出すまでもなく、経営者や担当者の熱意、組織的な推進環境が前提にあり、適切な場面で適切に活用されてこそ手法導入の効果が発揮されます。

また逆に、新プロセス導入を組織の意思統一の足掛かりとすることも可能で、そのような事例も多く報告されています。この場合は、推進組織、社内発表会、外部指導者などを上手に活用することがポイントです。目的の設定と共有は特に重要であり、これができないと折角の努力がとんでもない方向に進んでしまうことがあります。

革新活動の導入を開始したら、PDCAのサイクルを回しながら、あせらず少しずつ改善していきましょう。導入する手法に関わらず、事業環境分析、事業戦略の見直しからスタートして、それを実現するために優先順位が高い活動から進めていきます。

ものづくり革新のポイントと明日からの進め方
変化の大きな現代を生きるにあたり、その時代を恨んでも益はありません。自らが環境に合わせて変化する必要があり、世の先達が築いてきたフレームワークを利用することが効率的です。導入に際しては表1のような点に注意して進めると成功しやすいと言われます。

[引用元:白幡洋一「経営課題への品質工学の活用(1)」 品質工学会誌 Vol.15 No.2(2007)]

特に先進的なやり方については、書籍やネット上の情報を参考にすると共に、専門家の力を利用しましょう。新しいゲームを始める時に攻略本は有効ですが、コンサルは不要です。ですが、スキューバダイビングを始める時に、ガイド本だけで十分ですか?命の危険がありますから、インストラクターに教わりますよね。難しい問題ほど、外部の力が役に立ちます。

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ライタープロフィール

熊坂治

1979年東北大学工学部を卒業後、中堅メーカーで30年にわたり基礎研究、製品開発/設計、生産技術、製造技術、品質技術、事業企画など広い業務を経験したのち2009年コンサルタントとして独立。2011年に株式会社産業革新研究所を設立し、翌年から製造業向け情報発信Webサイト「ものづくりドットコム」を公開。山梨学院大学現代ビジネス学部客員教授(技術経営論)、技術士(経営工学部門、総合技術監理部門)、技術経営修士(専門職)、工学博士(東京工業大学)。


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