富士キメラ総研は2019年4月26日、面処理や多層化加工、フィラーの添加、ハイブリッド化などで機能を付与したフィルム「機能性高分子フィルム」の世界市場についての調査結果を発表した。この調査では、ディスプレイや半導体、実装分野で使われるエレクトロニクスフィルムが対象。同社は、エレクトロニクス分野の機能性高分子フィルム世界市場について2022年には3兆645億円に達すると予測している。
同調査によると、スマートフォン用の樹脂製背面パネルの市場は2017年から拡大しているという。富士キメラ総研はその理由として、ワイヤレス充電を金属の筐体で行うのは不可能なことから、スマートフォンの背面板の樹脂化が進んでいることを挙げている。また、5Gでは金属の筐体が電波に干渉する可能性があるため、2019年以降は5G対応としても背面板の需要が高まると予測。市場全体としては、2022年には2017年比3.6倍の208億円に成長すると予測している。
高周波対応フレキシブルプリント配線板(FPC)用フィルムでは、スマートフォンに搭載されるWi-Fiアンテナなどに用いるLCPフィルムの需要が好調だ。また、PIベースのFPC用フィルムは5Gの高周波(25GHz帯以上のミリ波)に対応できないと見られているため、代わりにLCPフィルムの採用増加が期待されている。低誘電PIフィルムは現在開発中であるが、2020年頃から量産化され採用が広がる見込みだ。市場全体としては、2022年には2017年比70.8%増の82億円に成長すると予測している。
ICチップの電極面と回路面を接着する絶縁フィルムである非電導性接着フィルム(NCF)は、アンダーフィルやTSV(Through Silicon Via)のウエハーの接着剤として使用される。TSVは高価だが、5G対応製品向けで処理速度の高速化が求められるため、2019〜2020年頃には採用が本格化する見通し。これに伴ってNCFの市場は、2022年には2017年比3.5倍の1.4億円に成長すると、富士キメラ総研は予測している。
ディスプレイ分野の機能性高分子フィルム市場は、LCDやタッチパネルの単価の下落のほか、ディスプレイ製品の販売台数の停滞により、今のところ拡大は緩やかである。しかし、2022年に向けては、フォルダブルスマートフォンや4K-TVなど新たな製品の登場や、画面の大型化による成長が予想される。特にOLED関連フィルムは、パネル製造ラインの立ち上がりやディスプレイの販売増加による拡大が期待されるという。
半導体/実装分野では、NANDフラッシュメモリーの3D化や大量生産/低コスト化が可能なパネル型半導体パッケージFan-Out WLPが、市場本格化により拡大するという。また、半導体/実装関連フィルムは、IoTや自動運転に関するセンサーや機器、システムの需要増加をはじめ、5G通信の実用化に伴う高周波対応ニーズや自動運転などでの放熱/電磁波対策ニーズの増加に伴い、拡大が予想されるとしている。