光波制御デバイスの新材料となる優れた光変調性能を持つ「完全表面結晶化ガラス」を開発 東北大学

東北大学は2020年9月7日、今までにない高い光変調性能を有する多結晶性セラミックス「完全表面結晶化ガラス」を開発したと発表した。

現代社会に必要不可欠なガラスの光ファイバーを伝送媒体とする光通信では、レーザー光の色を変化させたり(波長変換)、その振幅や位相を調整(光変調)したりするデバイスが必要になる。このような光変調などによる光波制御デバイスの実現は、非線形光学結晶と呼ばれる特殊な物質のみで発現するポッケルス効果によるものだ。

従来光波制御デバイスには、大きな自発分極(外部からの電場印加がなくてもイオンの変位によって自発的に分極する)を有するニオブ酸リチウム(LiNbO3)単結晶が使用されているが、透明で大型の単結晶材料の育成に時間を要してコストが高くなったり、光ファイバーで使用されるガラス材料と本質的に構造が違うために、長期にわたるファイバーとデバイスとの接続整合性が担保できないなどの課題があった。

また、同大学ではこれまで結晶化ガラスの研究の中で、自発分極を有するSr2TiSi2O8結晶が析出した「完全表面結晶化ガラス」を開発。ポッケルス効果の発現に成功したが、LiNbO3よりもその値が低いという課題も存在した。

天然鉱物のフレスノイト(Ba2TiSi2O8)は、チタンと酸素で構成されるピラミッド型TiO5ユニットの整列により自発分極を生じる。同大学が開発したSr2TiSi2O8結晶と同様にフレスノイト構造を持つ。ゲルマニウムを含むBa2TiGe2O8結晶は、LiNbO3結晶に匹敵する波長変換特性を示し、優れたポッケルス効果の発現が期待できた。今回の研究では、Ba2TiGe2O8結晶が析出した「完全結晶化ガラス」の作製に成功。結晶の構成元素の酸化物を含む前駆体ガラスを適切な温度で熱処理を施すことで、自発分極方向への配向性を有する試料を得た。

今回作製した材料を用いて基本的なポッケルス効果型のデバイスを構築。レーザー光を入射して電圧を印加すると、信号光強度が明らかに変化することを観測し、初めてBa2TiGe2O8結晶のポッケルス効果の発現を実証した。さらに前駆体ガラスの組成設計を実施することで、ポッケルス係数の最高値を達成した。

今回の研究の成果は、従来の光ファイバーネットワークとの親和性が高く、安価で量産性に優れた光波制御デバイスの設計、開発を推進すると期待される。また、情報通信分野以外の光応用分野への利用も期待されるという。

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