指先に乗るほどの小さな原子ビームコリメータを開発

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ジョージア工科大学の研究チームは、指先に乗るほどの小型原子ビームコリメータを作製したと発表した。3段のカスケード型になっているのが特徴だ。長期安定性を活用してナビゲーションシステムに搭載できるほか、高精度センサーや量子情報処理デバイスにも応用できる。研究結果は、2019年4月23日付けの『Nature Communications』に掲載された。

原子ビームにはルビジウムを使うことが多く、高密度の原子気体の一端に金属またはガラスのキャピラリーを接続して作るのが一般的だ。しかし、発生したビームはある程度広がりを持ち、それは信号ノイズとなる。原子ビームのコリメート自体は既存の技術だが、コリメータは精度の向上に伴って大型化する傾向にある。研究チームは、ビームの広がりを抑制しつつ、チップに実装できるサイズのコリメータを開発した。

コリメータの作製にはリソグラフィ技術を利用しているので、実用化も期待できる。まず、ウエハに細長いチャネルを複数平行にエッチングし、ウエハを重ねて密閉した後、チャネルを横切るように2カ所に溝を入れた。例として、チャネル幅100μm、深さ100μm、分割前のチャネル長3mm、チャネル数20本からなる3段のカスケードコリメータを披露している。1段目を出たところで比較的平行なビームは、2段目、3段目と順にチャネルに入射し、非常に優れた直線性を持つビームを形成することを確認した。

質量のない光子でできたレーザービームと違い、原子ビームには質量があり、運動量と慣性も持っている。そのため、次世代ジャイロスコープに応用できるという。通常、光ジャイロスコープを搭載した慣性装置は、長期的な誤差が無視できないため、頻繁に再校正する必要があり、遠隔地や宇宙空間での用途には向いていない。原子ビームは、安定したリファレンスとして利用できるため、GPSが使えない場所でのナビゲーションシステムへの適用が期待できる。

また、熱励起した原子は、リュードベリ原子となりうる。リュードベリ原子とは、十分なエネルギーを与えられた際に、電子が通常の軌道よりさらに外側を周回している状態で、量子特性の研究において大いに注目されている。「基底状態にある2つの原子よりもより強く相互作用するため、リュードベリ状態を利用すると、多原子量子もつれといったものを作り出すことができる」と、Chandra Raman准教授は語る。

さらに、「リュードベリ原子は、微小な電場や力の変化に敏感なため、次世代センサー技術の開発に役立つだろう。量子情報処理への利用も考えられる」と、共同研究者であるFarrokh Ayazi教授は、その可能性を説明している。

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Atomic Beams Shoot Straighter via Cascading Silicon Peashooters
Cascaded collimator for atomic beams traveling in planar silicon devices

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