ポンチ絵とは? そのメリットや描き方を徹底解説!

現在では、最新のITツールを使って開発することが求められる機会も多いですが、紙に手描きで作成するポンチ絵が必要とされることもあります。パソコンでの作業が当たり前の世代の中には、ポンチ絵のことを知らない人もいるでしょう。しかし、ポンチ絵の描き方を習得して活用できるようになれば、関係者に容易に開発構想を理解してもらえるようになり、効率的な製品開発ができるようになります。

1.ポンチ絵とは?

ポンチ絵とは、これから開発する製品のイメージを伝えるために使うもので、手描きで手軽に描くのが一般的です。ポンチ絵という言葉自体は、漫画絵や漫画雑誌を語源とするとされています。主に製造や建設などの業界における開発現場で使われてきましたが、IT業界などの開発においても効果的な方法の一つとなります。

基本的なルールのようなものもありますが、開発の概略や構想などを表現するものなので、まずは開発者の意図が伝わることを優先して作成しなくてはなりません。必要であれば、補足の絵を複数追加することもあります。

具体的なイメージが湧いてくるような手描き風のスケッチをポンチ絵としていますが、業界や組織によっては明確なルールがあることもありますから、過去の参考になるポンチ絵なども調べておく必要があります。

ポンチ絵は、これまで主に手描きで作成されてきたこともあり、パソコンが普及して以降は使われることも少なくなってきましたが、今でも構想を伝えるのに有効なツールです。

2.ポンチ絵を描くメリットとは

文章に加えて図を用いたポンチ絵を使うことで、分かりやすい資料ができあがります。その結果、イメージの共有、機能検証/構造検証を整理できる、製品開発スピードが上がる、視覚的に内容を伝えられる(具象化できる)などのメリットがあります。文章だけでは表現しきれないことでも、ポンチ絵なら表現できます。そして、内容だけではなく、適切な表現方法を選ぶことも大切です。

2-1.イメージの共有

今は文描をベースとした資料をもとに、顧客や関係者と打ち合わせをするのが基本となっていますが、開発内容を全て文章で表現するのは至難の業です。そのため、アイデアを自由に絵で表現できるポンチ絵を用いれば、関係者にイメージを共有できるので、内容を間違いなく伝えるのに役立ちます。イメージを共有してから仕様の詳細を説明すれば、正確で効率的な打ち合わせが行えて、開発する製品の品質も向上します。ポンチ絵を活用することで、開発のコンセプトは素晴らしいのに、それが関係者に伝わらないといったことがなくなります。

2-2.製品開発スピードが上がる

新規の開発をする場合は、細かい仕様を文描で明記するだけではなく、ポンチ絵で視覚情報も使って効率良く詳細な内容を伝えることも考慮するべきです。文描だけでは、読むだけで疲れてしまったり、必要な箇所を読み返すのにも苦労してしまいます。

最近は、製品の品質だけではなく、いかにスピーディに開発できるかも重要視されていますので、ポンチ絵を使って開発スピードを向上させることが肝心です。資料を作成する方も、ポンチ絵を使えば作業時間を短縮することが可能となります。

2-3.視覚的に内容を伝えられる(具象化できる)

メールやチャットツールの活用によって、誰とでも随時密接なコミュニケーションが取れるようになりましたが、文章のやり取りだけでは相手に内容を正確に伝えられないこともあります。そのような時には、内容を具象化できるポンチ絵を使用すれば、視覚的効果も加わって分かりやすく説明できるようになります。

頭の中の構想を整理する際にも、一度ポンチ絵によって内容をまとめてみれば、すっきりと整合性のあるものに整理できます。

3.ポンチ絵の描き方

ポンチ絵は、1本線だけで描くのが基本です。そして、ものを描く場合は、斜め上から表現する立体図を用います。複数の絵を用いて表現することもありますが、ものを斜め上から見た図を中心とし、平面図などは補足説明のために使うようにします。立体図で表現する場合は、隠れてしまう部分も出てきますが、その箇所を表現するためには、破線を用います。

立体的にものを描くという点では、アイソメ図の描き方が参考になります。アイソメ図とは、「アイソメトリック図」の略称です。立体を斜めから見た図を表示する方法のひとつで、等角投影図のことです。いきなり複雑な形状のものをポンチ絵で描こうとすると上手くいきませんので、まず立方体や円柱などの簡単な形状のものを表現できるようにしましょう。

3-1.手順1-単純な形状のものの描き方

ポンチ絵で立方体を描く場合は、正面と右側面に挟まれた1辺を垂直に配置し、それを基準として他の箇所を描いていきます。正面と右側面は30度傾け、続いて上面を描けば立方体が完成します。それぞれの面の中心は、各面の頂点を結び合わせれば分かりますので、できるだけズレのないように調整します。隠れた辺を破線で表現する際は、対応する見えている辺と平行になるように描きます。

長方形については、立方体を描くのと同じ要領で描くことができます。正面と右側面を垂直方向に伸ばせば、長方形になります。上面については、立方体を描く場合と同じです。

円柱を描く場合は、まず長方形を描きます。それから上面と隠れている下面に円を描いて、それぞれの円の端をつなげば、円柱が完成します。長方形の大きさがそのまま円柱の大きさになります。

このように、立方体がポンチ絵で用いる立体図の基本です。立方体が上手く描けるようになれば、工夫することで他の図形も容易に描けるようになります。

3-2.手順2-実際の製品の描き方

単純な形状のものの描き方を発展させれば、どのような形状でもポンチ絵で表現できますが、開発コンセプトを明確にするには最も特徴のある箇所を、正面にすることが重要です。

立方体の描き方を念頭に置きつつ、特徴のある面を30度傾けて正面に描きます。まずは重要な箇所だけを描きましょう。その後、付属する箇所を次々に描き足すようにし、不要な線は消し表現したい線は破線で描いて全体像を完成させます。

それから、寸法、材料、各種の交差など、説明の文章を描き加えるようにします。漏れがないように、できるだけ文章による説明を書き加えたいところですが、あまり文章が多くなると絵の方がおまけのようになってしまうので注意しましょう。可能な限り絵で構想が分かるように工夫して、文章が多くなり過ぎないようにします。

必要があれば、追加の絵を描き加えて、より分かりやすいポンチ絵とします。後から描き加えられるように、スペースに余裕があるように絵や文章を配置するのがポイントです。

4.ポンチ絵を描くコツ・ポイント

ポンチ絵を上手く描くためには、描き方の基本を理解した上で、描くことが大切です。基本的な作成方法に従い、伝えたい内容を表現できるように心掛けて練習すれば、分かりやすいポンチ絵が描けるようになります。

製図などと違って、実際に製品を製作するために使う訳ではないので、それほど正確に描く必要はありません。構想が理解できれば良いのですから、少し位なら曲がっていたり辻褄の合わない箇所があっても気にしないようにしましょう。

4-1.コツ・ポイント-練習方法

効率良く練習するためには、他の人が描いた出来の良いポンチ絵を模写するのが良いでしょう。まず、そのポンチ絵がどのように基本的に従って描かれているのかを理解し、それを意識しながら模写します。納得の行くまで何回も模写しましょう。何枚ものポンチ絵を模写していると、作者の意図も分かるようになって、次第にコツが掴めてきます。

簡単な内容から始めてみたい場合は、テクニカルイラストの解説書が参考になります。テクニカルイラストとは、工業製品のカタログや取扱説明書などに用いられる製品や部品などの立体図のことで、国家検定試験として「テクニカルイラストレーション技能検定試験」もあり、資格検定に向けた書籍も発行されています。

そうした書籍にはテクニカルイラストの描き方が詳しく説明されているので、初心者でも勉強になります。立体図の描き方が具体的に解説されているものであれば、簡単な内容から始まり高度な内容へと挑戦できます。この場合も、ただ描くのではなく基本や構想の表現方法などを意識しながら、練習することが大切です。

4-2.コツ・ポイント-3D CADの活用

紙に手描きで描くのがポンチ絵の主流となっていますが、絵を描くのが苦手だったり時間をかけずに済ませたい場合には、3D CADの利用を検討してみましょう。3D CADであれば便利な機能を使って、簡単にポンチ絵を作ることができます。消したり動かしたりといった作業を繰り返せば、満足の行くポンチ絵が簡単に完成します。何度もポンチ絵を作成するのであれば、描いたものを保存しておいて、変更したい箇所だけ修正して流用するなど工夫すれば、さらに作業時間を短縮できます。

もしも、手描きで描いて欲しいと言われた時には、3D CADで作成したものを参考にして手描きすれば、それ程苦労することもなく立派なポンチ絵ができあがります。

5.まとめ

昭和の開発手法と捉えられることもあるポンチ絵ですが、使いようによっては頭の中にある構想を上手くまとめるのに役立ったり、顧客などの理解を深めるのに使える便利なツールです。最新のツールばかりが注目され、従来の手法を使っていると古臭いなどと言われることもありますが、役に立つツールは積極的に使うべきです。ポンチ絵の内容や描き方を理解して活用しましょう。ポンチ絵の描き方を身に付けて、自分の考えが自由に表現できるようになると、1ランク上の段階に進むことができます。

関連記事

製図とは。求められる場面や勉強の仕方に関して
3DCADとは? 使用するメリットやモデリング方法を解説!
機械設計エンジニアになるには?スキルや生かせる資格について解説

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る