ポンチ絵(ポンチエ)|意味や、押さえておきたいポイントとは

1.ポンチ絵のポンチとは

ポンチ絵の「ポンチ」とは、もともとは風刺漫画雑誌の挿絵を指す言葉でした。イギリス人のチャールズ・ワーグマンによって1862年(文久2年)に創刊された雑誌『ジャパン・パンチ』の挿絵を、福地源一郎(桜痴)が「ポンチ」と紹介しています。また、同雑誌の影響を受けて1877年(明治10年)に創刊された雑誌『團團珍聞』では、ワーグマンの影響を受けたと言われる浮世絵師の小林清親が、『清親ポンチ』シリーズとして挿絵を担当しました。

現代では挿絵の意味でポンチという言葉を使うことはなくなり、製造や建築、土木、ITなどの業界において、正式な設計図を作成する前に概略や構想などを簡単にスケッチしたものをポンチ絵と呼ぶようになりました。また官公庁では、事業計画や政策内容などを分かりやすくまとめたスライドの概略図をポンチ絵としています。

2.製造業にとってのポンチ絵とは

ポンチ絵とは、これから開発する製品のイメージを伝えるために使うもので、手描きで手軽に描くのが一般的です。ポンチ絵という言葉自体は、漫画絵や漫画雑誌を語源とするとされています。主に製造や建設などの業界における開発現場で使われてきましたが、IT業界などの開発においても効果的な方法の一つとなります。

基本的なルールのようなものもありますが、開発の概略や構想などを表現するものなので、まずは開発者の意図が伝わることを優先して作成しなくてはなりません。必要であれば、補足の絵を複数追加することもあります。

具体的なイメージが湧いてくるような手描き風のスケッチをポンチ絵としていますが、業界や組織によっては明確なルールがあることもありますから、過去の参考になるポンチ絵なども調べておく必要があります。

ポンチ絵は、これまで主に手描きで作成されてきたこともあり、パソコンが普及して以降は使われることも少なくなってきましたが、今でも構想を伝えるのに有効なツールです。

3.ポンチ絵を描くメリットとは

文章に加えて図を用いたポンチ絵を使うことで、分かりやすい資料ができあがります。その結果、イメージの共有、機能検証/構造検証を整理できる、製品開発スピードが上がる、視覚的に内容を伝えられる(具象化できる)などのメリットがあります。文章だけでは表現しきれないことでも、ポンチ絵なら表現できます。そして、内容だけではなく、適切な表現方法を選ぶことも大切です。

3-1.イメージの共有

今は文描をベースとした資料をもとに、顧客や関係者と打ち合わせをするのが基本となっていますが、開発内容を全て文章で表現するのは至難の業です。そのため、アイデアを自由に絵で表現できるポンチ絵を用いれば、関係者にイメージを共有できるので、内容を間違いなく伝えるのに役立ちます。イメージを共有してから仕様の詳細を説明すれば、正確で効率的な打ち合わせが行えて、開発する製品の品質も向上します。ポンチ絵を活用することで、開発のコンセプトは素晴らしいのに、それが関係者に伝わらないといったことがなくなります。

3-2.製品開発スピードが上がる

新規の開発をする場合は、細かい仕様を文描で明記するだけではなく、ポンチ絵で視覚情報も使って効率良く詳細な内容を伝えることも考慮するべきです。文描だけでは、読むだけで疲れてしまったり、必要な箇所を読み返すのにも苦労してしまいます。

最近は、製品の品質だけではなく、いかにスピーディに開発できるかも重要視されていますので、ポンチ絵を使って開発スピードを向上させることが肝心です。資料を作成する方も、ポンチ絵を使えば作業時間を短縮することが可能となります。

3-3.視覚的に内容を伝えられる(具象化できる)

メールやチャットツールの活用によって、誰とでも随時密接なコミュニケーションが取れるようになりましたが、文章のやり取りだけでは相手に内容を正確に伝えられないこともあります。そのような時には、内容を具象化できるポンチ絵を使用すれば、視覚的効果も加わって分かりやすく説明できるようになります。

頭の中の構想を整理する際にも、一度ポンチ絵によって内容をまとめてみれば、すっきりと整合性のあるものに整理できます。

4.ポンチ絵の描き方

ポンチ絵は、1本線だけで描くのが基本です。そして、ものを描く場合は、斜め上から表現する立体図を用います。複数の絵を用いて表現することもありますが、ものを斜め上から見た図を中心とし、平面図などは補足説明のために使うようにします。立体図で表現する場合は、隠れてしまう部分も出てきますが、その箇所を表現するためには、破線を用います。

立体的にものを描くという点では、アイソメ図の描き方が参考になります。アイソメ図とは、「アイソメトリック図」の略称です。立体を斜めから見た図を表示する方法のひとつで、等角投影図のことです。いきなり複雑な形状のものをポンチ絵で描こうとすると上手くいきませんので、まず立方体や円柱などの簡単な形状のものを表現できるようにしましょう。

4-1.手順1-単純な形状のものの描き方

ポンチ絵で立方体を描く場合は、正面と右側面に挟まれた1辺を垂直に配置し、それを基準として他の箇所を描いていきます。正面と右側面は30度傾け、続いて上面を描けば立方体が完成します。それぞれの面の中心は、各面の頂点を結び合わせれば分かりますので、できるだけズレのないように調整します。隠れた辺を破線で表現する際は、対応する見えている辺と平行になるように描きます。

長方形については、立方体を描くのと同じ要領で描くことができます。正面と右側面を垂直方向に伸ばせば、長方形になります。上面については、立方体を描く場合と同じです。

円柱を描く場合は、まず長方形を描きます。それから上面と隠れている下面に円を描いて、それぞれの円の端をつなげば、円柱が完成します。長方形の大きさがそのまま円柱の大きさになります。

このように、立方体がポンチ絵で用いる立体図の基本です。立方体が上手く描けるようになれば、工夫することで他の図形も容易に描けるようになります。

4-2.手順2-実際の製品の描き方

単純な形状のものの描き方を発展させれば、どのような形状でもポンチ絵で表現できますが、開発コンセプトを明確にするには最も特徴のある箇所を、正面にすることが重要です。

立方体の描き方を念頭に置きつつ、特徴のある面を30度傾けて正面に描きます。まずは重要な箇所だけを描きましょう。その後、付属する箇所を次々に描き足すようにし、不要な線は消し表現したい線は破線で描いて全体像を完成させます。

それから、寸法、材料、各種の交差など、説明の文章を描き加えるようにします。漏れがないように、できるだけ文章による説明を書き加えたいところですが、あまり文章が多くなると絵の方がおまけのようになってしまうので注意しましょう。可能な限り絵で構想が分かるように工夫して、文章が多くなり過ぎないようにします。

必要があれば、追加の絵を描き加えて、より分かりやすいポンチ絵とします。後から描き加えられるように、スペースに余裕があるように絵や文章を配置するのがポイントです。

5.まとめ

昭和の開発手法と捉えられることもあるポンチ絵ですが、使いようによっては頭の中にある構想を上手くまとめるのに役立ったり、顧客などの理解を深めるのに使える便利なツールです。最新のツールばかりが注目され、従来の手法を使っていると古臭いなどと言われることもありますが、役に立つツールは積極的に使うべきです。ポンチ絵の内容や描き方を理解して活用しましょう。ポンチ絵の描き方を身に付けて、自分の考えが自由に表現できるようになると、1ランク上の段階に進むことができます。

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