カエルの胚の幹細胞から次世代型生体ロボットを創生

Tufts University/YouTube

タフツ大学とバーモント大学の研究チームは、生きた細胞でできている微小ロボット「ゼノボット(Xenobot)」の新バージョンを開発した。以前のバージョンより速く動き、情報を記憶することができる。研究成果は、『Science Robotics』誌に2021年3月31日付で公開されている。

昨年研究チームが開発したゼノボットは、カエルの胚の幹細胞をコンピューターシミュレーションしたデザインに組み立て直して作り上げた人工生命体で、自力で動きまわり小さな荷物を運んだりできる。初期のバージョンは、カエルの皮膚や心臓の細胞を切り出して再配置するトップダウン方式で作られたが、今回のバージョンでは幹細胞を採取して自己組織化させ、スフェロイドに成長させるというボトムアップ方式での作成に成功した。

初期バージョンのゼノボットでは収縮する心臓細胞を手作業で配置し、推進力を生じさせていた。しかし、新バージョンのスフェロイド型ゼノボットは、繊毛が足の役割をして、より素早く動けるようになった。通常、カエルの繊毛は肺などの粘膜表面に存在し、病原体などの異物を排除するのに役立っている。ところが、ゼノボットではカエルと同じゲノム情報を持っているにも関わらず、繊毛が運動という新しい機能に再利用されている。

バーモント大学の研究者らはコンピューターシミュレーションを担当し、何十万ものランダムな環境条件下から、群れをなして最も協力的に働くことができるゼノボットを特定した。

また、新しいゼノボットは、記憶を記録できる機能も搭載している。胚の細胞に蛍光タンパク質をコードするmRNAを導入することで、390nm付近の青色光に曝露すると色が変わる機能を得た。原理的には、光だけでなく、放射性物質や化学汚染物質、薬物、病気の有無なども検出、記録できるようになるという。さらに、環境の状態を知らせるだけでなく、修正し修復するようなロボットを開発できる可能性もある、と研究チームは述べている。

生体でできているゼノボットは、金属やプラスチック製のロボットと異なり、自己修復が可能だ。新しいゼノボットは、傷が体の厚さの半分にもおよぶ重度の全身裂傷を受けても、5分以内に傷がほぼふさがり、最終的にはすべてのゼノボットが治癒して、以前と同じように働くことができた。また生物学的ロボットは、代謝という機能があるため、化学物質の吸収、分解または合成、排泄ができる小さな工場としても機能できるという。

新ゼノボットは以前のバージョンと同様に、追加のエネルギーなしに完成から10日間生存し、栄養培地に入れておけば数カ月間動き続けられる。

ゼノボットは、ドラッグデリバリーや環境浄化などへの応用が期待されている。その上、自然界の生物と同様に、個々の細胞がどのように集まりコミュニケーションをとって分化していくのかを知る研究にも使えるという。これは再生医療の基礎モデルとして用いることが可能だ。

研究チームは、今後数カ月の間に、「Institute for Computer Designed Organisms(ICDO)」を設立し、外部機関と連携してさらに高度な機能を持つ生体ロボットを作ることを目指している。

関連リンク

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