- 2020-3-4
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- Abigail Gaylord, IQ, Leonardo Trasande, Molecular and Cellular Endocrinology, ニューヨーク大学医学部, ホルモン, ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE), 有機リン系殺虫剤, 重金属
鉛や水銀が人体に大きな影響を与えることはよく知られている。特に子どもは有害物質の影響を受けやすく、幼児期に重金属を摂取すると、IQの低下を引き起こすなど子どもの脳の発達に関連があるとされる。その結果、いずれは社会の経済活動にも大きな損失を与えることになる。
ニューヨーク大学医学部の研究チームは、2001~2016年のIQスコアを分析した結果、重金属が規制されたことも功を奏して、有害化学物質を原因とするIQ損失が、2700万IQポイント(2001~2002年)から900万IQポイント(2015~2016年)に減少していることが分かったと発表した。全体的な減少は歓迎すべきことだが、重金属以外の化学物質の影響が大きくなっていることも明らかとなった。研究結果は、2020年1月14日付で、『Molecular and Cellular Endocrinology』誌に掲載されている。
研究チームによると、難燃剤に使われているポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)と有機リン系殺虫剤に起因する認知欠損が見られる子どもの割合が、調査期間中に67%から81%に増加したという。
さらに、16年間の研究の結果、鉛、水銀、難燃剤、殺虫剤に日常的に接していた119万人以上の子どもたちが、何らかの知的障害を患っていることが判明した。経済的損失とその他の社会的コストを見積もると、7.5兆ドル(約830兆円)に達するという。
重金属、特に鉛や水銀は、脳や腎臓の機能を低下させることが知られている。重金属に加えて難燃剤や殺虫剤も、脳の発達に関わるホルモンを分泌する甲状腺に悪影響を与える。幼児期にこれらの有害物質にさらされると、学習障害、自閉症、問題行動の原因になり得ると、研究チームは指摘する。しかし、厄介なのは、こうした化学物質が身近な家庭用品や食品にも含まれているということだ。
「残念ながら、難燃剤や殺虫剤を排除するために実施されている政策は必要最低限で、明らかに不十分だ」と、研究チームを率いるAbigail Gaylord研究助手は語り、「コストのかかる規制に反対する人たちはいるが、このような化学物質を無制限に使用すれば、長い目で見ると、アメリカの子どもたちが最も大きな負担を背負うことになり、もっとコストがかかることになる」と、Leonardo Trasande教授も述べている。
対策として「窓を頻繁に開けて、家具、家電、カーペットなどに残存している化学物質を放出させ、認証を受けた有機野菜を食べることで、毒素への暴露を減らすことができる」とTrasande教授は語っている。