- 2020-4-24
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- LiDAR, Optica, スマートフォン, ナノ加工技術, フォーカシング, フラットレンズ, ユタ大学, 学術, 自動運転車, 顕微鏡
ユタ大学が、厚さ約1000分の1インチの単レンズを使用して、フォーカシング不要のカメラを作成した。この成果は、2020年3月20日に刊行された『Optica』に掲載された。
スマートフォンでも顕微鏡でも、カメラのレンズは対象の細部を鮮明に写すための焦点合わせ、フォーカシングが必要だ。カメラから異なる距離に複数の対象がある場合は、それぞれ別に焦点を合わせなければならない。一般的なカメラでは、高品質で焦点の合った画像を結ぶために複数枚のレンズを使っている。
それに対して今回研究チームは、1枚の極薄レンズを使い、焦点合わせの必要性をなくし、すべての対象に同時に焦点を合わせられるカメラを開発した。これまで光学の教科書で教えられていることとは対照的に、光の伝達が理想的なレンズによって影響される方法が複数あることが示された。これは瞳孔関数として知られる概念で、レンズの瞳孔関数のもつ無限の可能性の中から、焦点深度が極大となるレンズを見つけ出した。
そして、ナノ加工技術を使用してプロトタイプレンズを作成した。フラットレンズは、光が進む方向を制御する重要な光学特性を実現するために、平らな表面にパターンを形成するナノ構造を使用する。実験により、新しいレンズが期待どおりに機能し、従来のマルチレベルベル回折レンズよりも数桁深い焦点深度を達成したことが確認された。互いに約6m離れている対象の焦点を維持することができるという。
この新しいフラットレンズは、カメラやその他のイメージングシステムの重量、複雑さ、コストを大幅に削減し、同時に機能を向上させることができる。これにより、スマートフォンカメラの薄型化、内視鏡検査などの生物医学イメージング向けのカメラの小型化、自動車用のカメラのコンパクト化が可能になる。また、自動運転車を含む多くの自律システムに不可欠なLIDAR用の高効率照明用途など、写真以外の多くの興味深い用途もあるとしている。