- 2020-4-29
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- 3Dプリント, ACS Nano, キーホール(小径の穴を穿孔する)手術, ゴム, チャルマース工科大学, ナノ構造化材料, 抗微生物ペプチド, 耐性菌
スウェーデンのチャルマース工科大学の研究チームは、毒性が低く、ヒト組織と置き換え可能なナノ構造化材料を開発した。ゴムのように柔軟性と弾力性を備え、加工性も高い。研究結果は、2020年1月28日付の『ACS Nano』に掲載されている。
研究チームは、骨のように硬質な材料の開発を進める過程で、思わぬ結果に遭遇した。「生体適合性樹脂を組み合わせてナノ構造化した材料は、非常に柔らかく、柔軟性があり、弾性性も高いと分かって大変驚いた。骨の置換材料としては機能しないという結論にはなったが、この発見は新しく予想外で、非常に面白い」と、研究チームは語る。
毒性が低く、加工が容易なのも特長だ。細菌が増殖しないように表面を抗菌加工することができるため、医療用途に適している。まずは、導尿カテーテルへの適応を考えているという。
また、自然免疫反応として機能する抗微生物ペプチドを表面に付着させれば、耐性菌が問題となっている抗生物質の削減につながる。患者への負担が少ないキーホール(小径の穴を穿孔する)手術で注入できるため、組織の再生手術の方法を大きく変えると予想される。液体で注入した後、患部で弾性体へと硬化させたり、必要な形状に3Dプリントして利用することも可能だ。
さらに、内部に多数含まれるナノポアを利用すれば、薬を体内の必要な場所だけに運べて副作用も減らせる。軟骨の置換材料や整形手術のフィラーなど、用途は幅広いようだ。
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