AI開発で求められているエンジニアとは――ITエンジニアからデータサイエンティストまで [AIでSociety5.0を実現する]

メイテックネクスト 代表取締役社長 河辺真典氏

~Society 5.0で何が変わるのか。「人工知能」が当たり前になる世界で、エンジニアに何が求められるのか~

本記事は、エンジニア専門の転職支援会社メイテックネクストの代表取締役社長 河辺真典氏への取材を通じて、人工知能(AI:Artificial Intelligence)の最新事情をお伝えしていく連載記事です。

第1回:AI開発に関する日本の現状と課題とは――国家戦略として位置づけられるAIエンジニアの育成 [AIでSociety5.0を実現する]

第2回目の今回は、AI開発で求められているエンジニアについて、Society 5.0実現のためにエンジニアが果たすべき役割などを中心にお話を伺いました。(執筆:後藤銀河)


――AIは技術的に新しい分野だと思いますが、産業界においてAIエンジニアとは具体的にどのように定義されているのでしょうか。

[河辺氏]統合イノベーション戦略推進会議が発表した「AI戦略2019 」の戦略目標のひとつに、「世界で最もAI時代に対応した人材の育成を行う」という表現があります。このAI時代に対応した人材というのは、「最先端のAI研究を行う人材」、「AIを産業に応用する人材」、「中小の事業所で応用を実現する人材」、「AIを利用して新たなビジネスやクリエーションを行う人材」などといったカテゴリーが示されています。そして、Society 5.0を実現するための環境整備の一環として「毎年100万人の社会人が基本的情報知識とデータサイエンス・AI等の実践的活用スキルを習得できる機会を提供する」という具体的な目標も掲げています。

AI関連職は、5つのレベルに分類される

[河辺氏]一言でAI人材といっても、AIに関する基礎知識があるという初級者からAI開発のエキスパートまで、いくつかのレベルに分けることができます。@IT/Deep Insiderではエンジニアリングという視点から、データサイエンティストやデータアナリストと呼ばれる、独自のAIモデルを作ることができる「レベル5」、最先端のAIモデルを使う「レベル4」から、一般的なAIモデルを作ることができる「レベル3」および学習済みのAIモデルを使うような「レベル2」のAI・機械学習エンジニア、そしてクラウドのAIサービスを使っている「レベル1」のITエンジニアまで、5つのレベルに定義しています。

AIに係わるエンジニアは5つのレベルに定義できる。出典: @IT、2019年6月18日「AI・機械学習の勉強をこれから始めたいという人のためのAI技術情報フォーラムです!」

――レベル1は、AIを使って日常の業務課題が解決できるようなレベル、ということでしょうか。

[河辺氏]すでに汎用クラウドの中にAIサービスやAPIがあり、画像認識やニューラルネットワーク、機械学習などの技術もパッケージ化され、データを入力するだけで必要な結果が得られるような製品、サービスが実現されています。こうしたサービスを使えば、AIについての必要最低限の知識があれば、AIを利用した機能実装が可能で、これがレベル1にあたります。AIのアルゴリズムを作り出して、自分でプログラミングするのではなく、既存のパッケージを使いこなして、新たなサービスを生み出し、世の中を良くしていく。レベル1ではそういう発想力が重要で、求められているわけです。

一方でエキスパートであるデータアナリストは、現象を数値化、モデル化するための数理モデルやアルゴリズムそのものを考えていきます。ビッグデータの中から目的とする解を求める複雑な計算式を、AI技術を使って実現する。例えば天気予報であれば、気象に関する多くの論文を読み解いて、過去の降水量などのデータから明日の天気を予想するためのアルゴリズムを編み出すわけです。これまで気象学者が考えていたようなことを、AIによるデータ解析によって実現することができる。これがレベル5になります。

――AIを導入するために求められているエンジニアという視点では、いかがでしょう。産業界全体としてみると、必要とされるレベルはこれから見えてくるようなイメージでしょうか。

[河辺氏]「AI戦略2019」の中では、AIの人材が不足しているとしていますが、アルゴリズムの設計やゼロからAIのコードを書くようなプログラマーが不足するといっているだけではないはずです。

自動車業界で活用されているモデルベース開発(MBD)を例にすると、当初はどのようにモデル化、デジタル化するのか、というところが中心でした。その後、徐々にMBDのパッケージ化が進んだことで、今では既存のモデルをどのように適用していくのか、つまり先のAIエンジニアのレベル1に相当するところが求められるようになってきました。

パッケージ化が進むことで、エキスパートが必要な理論や研究領域でのニーズに比べ、ライブラリーの積み重ねで解決できる課題がどんどん増えてくることで、レベル1に相当するニーズが相対的に大きくなってくるということだと思っています。

パッケージ化が進むことで導入の難易度が下がり、加速する

――自動車業界のように、開発のデジタル化が推進されてきた業界では、いろいろな領域でパッケージ化が進んでいるということですね。AIも同様に、AIそのものの研究開発から、AIの応用へとパッケージ化が進み、シフトしていくのでしょうか。

[河辺氏]自動車は将来的に電動化が進み、EVになることは明らかです。ではエンジニアが活躍できる場として、例えばEV開発がよいのか、AI分野に行くことがよいのか、どちらにリスクがあるのかを予想するのは難しい。EVは(開発のパッケージ化が進んで)将来的には単なる箱になる可能性がありますが、だからと言ってAIを開発する人材がそれほど必要になるのか、まだ分かっていないと思います。

AIサービスでは、すでにPythonを使ってプログラミングする必要は少なく、クラウドサービスを使って簡単に実現できてしまうパッケージが出てきています。多くの企業が直面している課題解決のために、既存のアルゴリズムを組み合わせながらプログラミングし、結果を出しているようなエンジニアが、今は求められていると思います。実際の開発現場でも、AIのパッケージを使って何かできないか、と上司から言われているエンジニアはたくさんいるのではないでしょうか。

そうした方にとって大切なのはAIを単なるツールとして考えるのではなく、その先に何があるのか、どう使われていくのかを考えるような探求心だと思います。視点、視野をひろげて、どうやって世の中を良くしていこうと考えていけば、果てしなく道は続いていくと思います。世の中をよくするための仕事、Society 5.0の目指す可能性は無限にあるということです。

次回は、「AIに関する求人ニーズ」と題し、人材不足が指摘されるAIエンジニアに関する求人、転職などについてご紹介します。

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河辺 真典(メイテックネクスト 代表取締役社長)
生産技術エンジニアとして5年・リクルートエージェントで8年の勤務経験あり。
弊社のコンサルタントは、転職支援のノウハウと業界・技術知識の両方に長けております。
その上で、単に転職先を決めるだけでなく、
転職先でご活躍いただく「失敗しない転職」をご支援するように心がけております。



ライタープロフィール
後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


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