紙や段ボールを、キーパッドなどのヒューマンマシンインターフェースデバイスに変える技術を開発

米パデュー大学は、湿気、液体の汚れ、ほこりに反応しない自己発電式で無線の紙ベース電子デバイス「RF-SPE」の製造手法を開発した。紙や段ボールのパッケージを、シンプルな印刷プロセスでキーボードやキーパッドなどの使いやすいヒューマンマシンインターフェース(HMI)デバイスに変えることができる。この研究は、2020年8月23日付で『Nano Energy』に掲載された。

入手しやすくどこにでもある紙という基材に多機能な電子デバイスを製造することは、低コストで環境に優しく、軽量で柔軟性があることから注目を集めている。しかし、紙ベースの電子機器開発には、湿気による急速な劣化、バッテリーへの依存性、既存の量産技術との互換性の低さといった問題がある。

そこで今回の研究で、研究者らは、高度にフッ素化された分子で紙をコーティングすることで、水、油、ほこりをはじくようにする手法を開発した。具体的には、セルロース紙の表面に、アルキル化オルガノシラン、導電性ナノ粒子、電子親和力が強いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、電子親和力が弱いエチルセルロースを順番に噴霧堆積させていく。この水や油などをはじいて付着させないオムニフォビックコーティングにより、インクがある層と接している層にインクがしみ出ることがなく、複数層の回路を紙に印刷できる。

この技術により、ユーザーが触ることで発電し外部バッテリーを必要としない垂直圧力センサーの製造が容易になる。また、RF-SPEの摩擦電気領域が、自己発電式のBluetooth通信を可能にする。

研究グループは、ノートの紙を使って音楽プレーヤーの操作インターフェースを作り、指でタッチしたりなぞったりするだけで、曲を選んだり、再生したり、音量を変更したりできることを実証した。今回の研究は、紙で作られた自己発電式電子デバイスを初めて実証したものとなるという。

このようにして作られたデバイスは最大300μW/cm2の電力密度を生成でき、1つ当たりの印刷コストは0.25ドル(約30円)未満と低い。さらに、軽量で柔軟性があり、折り曲げ時にも優れた安定性を示す。また、従来の大規模な印刷プロセスと互換性があることも特徴となっている。

この技術の応用としては、食品の包装材に使用して食品を安全に消費できるかどうか確認できるスマートパッケージにしたり、家に届いた荷物の表面を指でなぞるだけでサインができるようにしたりするといったことが想定されている。

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