二次元材料中の電荷移動をコントロールする新手法

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Image courtesy Nano Letters

米セントルイス・ワシントン大学は、2021年1月14日、原子レベルの薄さのグラフェンデバイスに塩化ルテニウム(α-RuCl3)薄膜層を重ね、局所的に電荷を加える方法を発見したと発表した。これは二次元材料中の電荷移動を制御する新手法といえる。研究成果は、『Nano Letters』に2020年11月9日付で掲載されている。

研究グループは、種類が異なる原子薄膜材料を積層させて作製するファンデルワールスヘテロ構造の研究を進めている。通常、電荷を制御するにはデバイスに電界を印加する手法を用いていたが、今回の発見ではα-RuCl3層を追加するだけで電荷を制御できたという。凝縮物質を研究する物理学者たちは、α-RuCl3の反強磁性特性を量子スピン液体に活用したいと考えていた。

研究グループは、ラマン測定、光起電力測定、電気伝導度測定の結果を第一原理計算に用い、α-RuCl3の大きな仕事関数と狭いバンドが変調ドーピングを可能にすることを確認した。研究では、剥離した単層グラフェンや二層グラフェン、化学蒸着法を用いたグラフェンや二セレン化タングステン(WSe2)、エピタキシャル成長法を用いた硫化ユウロピウム(EuS)で現象を確認。α-RuCl3層が一定量の電子を取り込むことで、外部の電場を必要としない電荷移動を可能にするという。

さらに、研究グループは光起電デバイスにおいて原理を実証。ねじれ角による制御や、グラフェンとよく似たハチの巣構造を持つ絶縁体材料である六方晶窒化ホウ素内を電荷が移動することを実証した。

α-RuCl3単層に近接する材料で65nm以下の横方向ドーピングと高い均質性を達成し、高い正孔密度(1cm2当たり3×1013)での単層グラフェンの移動度が4900cm2/(V s)であることが確認された。また、二層グラフェンへの電荷移動が1cm2当たり6×1013増えていることも判明した。

絶縁体の厚さを変えることで電荷の流入量を制御でき、電荷の発生源を物理的かつ空間的に分離することもできる。論文の責任著者であるErik Henriksen助教授は「通常はバルク材料に原子を加えなければなりませんが、そうすると無秩序状態が多発します。しかし、この方法では電荷はすぐに流れ込んできて化学構造を変える必要がないので、『クリーン』に電荷を追加する手法なのです」と語っている。

α-RuCl3薄膜単層を重ねるだけで電荷を発生させて移動させることができるという今回発見された手法は、α-RuCl3層とグラフェンとの間に絶縁素材から成る層を挟んでも機能し、グラフェンだけでなくさまざまな他の物質にも応用が可能だという。原子薄膜材料を通過する電流の流れを制御することは、将来的には太陽光発電やコンピューティング分野での応用が期待される。

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Modulation Doping via a Two-Dimensional Atomic Crystalline Acceptor

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