- 2021-3-20
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- Boris Yakobson, スピントロニクスデバイス, トポロジカル絶縁体, ファンデルワールス力, ヘテロ二重層, 半導体アンチモン, 多機能ナノ材料, 太陽エネルギー, 学術, 強誘電性セレン化インジウム, 量子コンピューティング
太陽エネルギー用途と量子コンピューティング用途の両方に役立つという2種類の電子特性を切り替えられる多機能ナノ材料が開発された。この研究は米ライス大学によるもので、研究成果は『Nano Letters』に2020年12月23日付で掲載されている。
多機能ナノ材料の実現は興味をそそるだけでなく、ナノスケールのデバイスで使用するのに実用的な意味でも魅力的だ。
今回、研究者らが設計したのは、単原子層の半導体アンチモンと強誘電性セレン化インジウムを組み合わせたヘテロ二重層だ。この二重層は、ファンデルワールス力によって弱く結び付いており、電界に晒されると層の物理的な構成が変化して、化合物のバンドギャップが変化する。このように外部電界によるセレン化インジウム層の強誘電性分極が、二重層にはっきりと異なる電子特性をもたらすことが、密度汎関数法第一原理計算によって分かった。
分極が内側へ向く場合、この二重層は可視光吸収に適したバンドギャップを持つ単純な絶縁体となる。太陽光発電に役立つ可能性があり、ソーラーパネルに適した材料になり得る。
一方で、外向きに分極すると、内部は絶縁体でありながら表面に沿って電子を伝導するというトポロジカル絶縁体となる。これは、量子コンピューティングで使用するスピントロニクスデバイスとして有用になる可能性がある。
このように材料の電子バンド構造を自在に切り替えることができるということは魅力的だ。強誘電状態とトポロジカル秩序には強い関連性があり、電圧を印加すると強誘電性分極を介してトポロジーが切り替わる。
また、中心にあるセレン原子が強誘電分極の切り替えに伴って移動する。セレン化インジウムにおけるこの種の切り替えは、最近の実験で観察されている。
これまでに作られたホウ素入りフラーレンのような他の構造とは異なり、この切り替えできる材料は比較的簡単に作成できる可能性があるという。外部電界によって2つの状態を可逆的に切り替えられるということは、将来の多機能ナノデバイスへの応用の可能性をもたらすかもしれない。研究チームのBoris Yakobson教授は、この研究はデバイス工学と制御に新しいパラダイムを提供するものだとしている。