- 2021-7-16
- 化学・素材系, 技術ニュース
- CFRP, DIC, NEDO, セーレン, プリプレグシート, 新エネルギー・産業技術総合開発機構, 炭素繊維強化プリプレグシート, 炭素繊維複合材料, 研究, 福井県工業技術センター, 速硬化炭素繊維強化プリプレグシート
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2021年7月15日、世界最速レベルの短時間で硬化し、常温保管できる「速硬化炭素繊維強化プリプレグシート」を開発したと発表した。DIC、セーレン、福井県工業技術センターによる成果で、自動車分野をはじめ幅広い産業への展開を検討し、自動車などの軽量化による低燃費化や省エネルギー化につながるのではないかと期待されている。
自動車車体の素材として、軽量かつ強じんな炭素繊維複合材料(CFRP)の利用が増加傾向にあるが、CFRPは既存の金属材料と比較して、材料費が高い上に成形速度が遅く、コスト増になるといった課題を抱えている。速硬化炭素繊維強化プリプレグシートは、こうした課題を解決することで自動車分野において採用/量産化が進むことを目指して開発されたものだ。
3社はNEDOが進める「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/実用化開発フェーズ」の技術開発テーマの1つとして、2018年7月より「自動車搭載炭素繊維複合材料用高速硬化プリプレグの実用化開発」に3年間取り組んできた。
炭素繊維の束を広げて樹脂を含浸させたシート状の中間材料である炭素繊維強化プリプレグシートは、軽量で強度が高い。しかし一般的に、プリプレグシートを含めたCFRPは成形加工に時間を要し、生産コストの高さが普及の妨げになっているため、成形時間を短縮する技術が求められてきた。
開発した速硬化炭素繊維強化プリプレグシートの硬化時間は、最短30秒と世界最速レベルとなっているため、コストダウンが図れる。また、一般的なエポキシ系のプリプレグシートは冷凍/冷蔵倉庫などでの保管が必要だが、速硬化炭素繊維強化プリプレグシートは常温保管できる。シートの保管設備と管理負担も軽減できる。
ハイサイクル成形を達成し、成形時間はエポキシ品と比べて3分の1から6分の1。部品製造工程での省エネルギー化にも貢献する。さらに多様なニーズに応えるため、金型プレス成形やダブルベルトプレス成形、シートワインディング成形の推奨成形条件を設定している。
開発においては、DICが高分子設計テクノロジーを生かして「高速硬化樹脂(最短30秒以下で硬化するラジカル硬化樹脂)」を設計。セーレンは樹脂成膜や塗工技術を生かした「高精度含浸技術」、福井県工業技術センターは繊維束を高速に薄く広げる「空気開繊技術」を開発した。
速硬化炭素繊維強化プリプレグシートは量産プロセスが構築されており、2021年7月よりセーレンで稼働させた実証機を用いたシートサンプルの提供を開始する。
3社は今後、製品化を目指す取り組みとして、開発したCFRPの特徴を生かしたプリプレグシートを提案。顧客獲得に向けたサンプル提供を継続する。また、実証設備を用いた量産化の検討を推進していくとしている。