カーボンナノチューブ繊維を縫い込み、心電図や心拍数を正確に測定できるスマートウェアを開発

Photo by Jeff Fitlow

導電性のナノチューブ繊維をアスレチックウェアに縫い付けて、心拍数をモニターしたり心電図を継続的に記録したりできるスマートウェアが開発された。この研究は米ライス大学によるもので、2021年8月30日付で『Nano Letters』オンライン版に掲載された。

腕時計型などのスマートウェアラブルデバイスは広く普及している。一方で、電子テキスタイルは、硬い電子材料を柔軟な布地に埋め込むことが難しいため、進歩が遅れている。電子衣料には、導電性、堅牢性、生体適合性に優れ、大規模生産が可能な繊維が必要だ。

そこで研究チームは、カーボンナノチューブ糸(CNTT)を用いて縫製可能な電極と信号伝送ワイヤーを作成した。CNTTは、一般的な縫い糸のように柔らかいが、金属レベルの導電性を持ち、皮ふとの界面インピーダンスが低い。

CNTTで作った電極で心電図を取得したところ、市販の医療用電極で得られた信号と匹敵するものだった。また、CNTTは、衣服の他の部分に信号を伝える伝送ワイヤーとしても使用可能だ。研究チームが開発した繊維はBluetooth送信機などの電子機器と接続する電極としても機能し、スマートフォンにデータを送信したり、ポケットにしまえるホルター心電計に接続したりできる。

この繊維は、通常の糸と同じように、ミシンで布地に縫い付けることができる。ジグザグ縫いすると、この繊維が切れることなく布地を伸ばすことができる。ジグザグのパターンは、シャツなどの生地がどの程度伸びるかを考慮して調整可能だという。さらに、CNTTを縫い込んだ衣類は、洗濯機で洗ったり、繰り返し伸ばしたりしても、断線しにくく着心地も良い。

研究チームを率いるMatteo Pasquali教授の研究室は、2013年に数百億本のナノチューブから成るカーボンナノチューブ繊維を発表した。それ以来さまざまな応用が研究されているが、最初に開発されたナノチューブフィラメントは、幅が約22µmと細すぎたため、ミシンでは使えなかった。そこで、模型船用のロープを作る小型機械を販売していた人の協力により作られた特注の機械で、フィラメントをより合わせて通常の糸とほぼ同じサイズにすることに成功した。原則としてフィラメント7本で1束とし、3つの束をより合わせて、縫製可能な糸を作った。

この繊維を布地に織り込むことで、アンテナやLEDを埋め込むことも可能だという。繊維の形状や電子機器をほんの少し変更するだけで、将来的には衣服を着用するだけでバイタルサインや呼吸数などをモニターできるようになるかもしれない。自動車やソフトロボットのヒューマンマシンインターフェースや、耐衝撃性を備えた軍服などへの応用も考えられるという。

今回の研究結果は、従来の衣料品製造技術に組み入れることができ、標準的な衣料品と同じ肌触りの繊維センサーや電子布が実現する可能性を示している。シャツは胸にぴったりと密着しなければならないため、今後の研究では、CNTTのパッチをさらに高密度にして、皮ふに接触する表面積を増やすことに注力する予定だ。

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